「極めて出来のいい作品。」愛の渦 bashibaさんの映画レビュー(感想・評価)
極めて出来のいい作品。
乱交パーティー、などという文言がチラシや広告に踊っていたため、ある種、キワモノ映画として、余り関心が持てなかったのですが、レビューを読んでいると、コメディーに近い、などの記述があり、一度、観てみようと思い、テアトル新宿まで出かけて行きました。途中、チケットポートに寄り、前売り券を買ったところ、なんと、最後の一枚でした。担当の人に訊いてみると、この映画の前売り券は大いに売れているとのことでした。午前10時50分の回を鑑賞。客の入りは6割弱。中高年の男性客が目立ちました。
男四人、女四人が初めて顔を合わせ、自己紹介をする場面は、まるで、ユースホステルのミーティングのようで、なかなか現実感が現れていました。性行為をする場所が一階下にあり、その上の待合室とでもいえる部屋では、全員が白いバスタオルを胴体に巻いています。最初から最後まで全員が全裸と云う訳ではないのです。性行為の場面はかなりデフォルメされています。主役の門脇麦がやり過ぎ友思えるくらいの大声を出します。また、途中から加わる柄本時生とその妻(もの凄く太っています。役者の名前は不明)がこの映画に厚みを増していきます。まるで、フェリーニの映画に出てきそうな、その妻との圧迫感溢れる性交シーンは、まるで、マンガでした。
映画を観終わってからの印象は、アメリカの劇作家エドワード・オ―ルビーの代表作「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」の群像劇版、ということになります。今まで鬱積していた男の言い分、女の言い分が、至る所で爆発するからです。煎じつめて云えば、残酷な喜劇、ということになるでしょうか。パーティーの終了時刻である朝の五時になって、ストーカー対策の為、まず、女性が退出し、そして、その後、男性が退出します。この映画はここで終わるのかと思っていると、最後になんとも残酷なエピソードがくっついています。また、最後の最後に窪塚洋介が頭にパーマをあてた恰好て、重要な役割を果たしていたことに気がつきました。
この映画は3月下旬現在、私が今年、観た映画の中で最良の映画でした。五月に開催されるカンヌ国際映画祭に出品してもかなりいいところまで行くのではないのでしょうか。
映画マニアを自負する人なら、絶対に見逃してはならない逸品です。是非とも、先入観を取り払って劇場へ行きましょう。