劇場公開日 2015年12月4日

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「ボンダリアン 万歳!!」007 スペクター デイビー宮さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ボンダリアン 万歳!!

2015年12月7日
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ボンダリアン

 名探偵のシャーロック・ホームズには世界中にその熱狂的フアンがいるそうで人々から羨望とやや嘲笑的に、またそれを自ら認めて「シャーロキアン」と呼ぶそうです。私が高校の図書委員長だった時に自分の高校の読書傾向を調べるために文学上のヒーロー、ヒロインの人気アンケートを取りました。その結果、男子学生の人気度ナンバーワンは圧倒的にシャーロック・ホームズでした。私は一介の私立探偵が憧れの人物とは皆真面目に書いたのかと一人で憤慨しました。(ちなみに私はダルタニアンでして、後で熟慮しましたら憤慨する立場にありませんでした)。顧問の先生に立派な分析を書いて頂きまして県の高校新聞コンクールで賞を取りました。女子の憧れはレット・バトラー船長とスカーレット・オハラで男子の女性ナンバーワンはメラニーでした。これについて余談ですが、昔の女性のナンバーワンはメラニーで、時代が下がるにつれてスカーレットになったそうです。一方男性の憧れの女性はずっとメラニーのままだったそうです。女性の進取の精神と男性の保守的な幼稚さが垣間見えますね。
 この題名の「ボンダリアン」は熱狂的ボンドフアンと言う意味の私の造語です。007映画ももう始まってから50年になるそうです。わたしが山奥の中学生の時は浜松から天竜川を上流にバスで遡り2時間の所に住んでいました。そこから下流に1時間行ったやや「お町」には映画館がありました。大友柳太朗の黒頭巾や劇場版隠密剣士をワクワクしながら鑑賞したものです。ある日、映画館前に東映時代劇フアンから見たらショッキングな次回上映予告のポスターが貼ってありました。映画館の正面に普段より一回り大きくそこだけスポットライトが当たっているように輝いて見えました。東映や日活、東宝や松竹、もちろん大映、新東宝の型にはまったポスターで無く、ほとんど人物のアップで題名も斜めで漢字数個の堅苦しいものではなく日常会話のフィーリングでした。純真な子供心を震撼させた次週上映の映画のポスターは薄い水着のグラマーなお姉さんが怯えて逃げ惑っているものでした。その題名は「007は殺しの番号」と言うイギリス映画のポスターでした。その頃は純朴な田舎少年でしたが特殊能力があり、薄い水着は透視できました。お姉さんの名前がアーシュラ・アンドレスと言う女優さんでした。習ったばかりの英語でもun-dress(ドレスを着ていない)の意味はわかりました。これも田舎少年の特殊能力で英語の綴りから立体像が頭にカラーで形成されました。このポスターとの幸せな出会いがその後の私の人生に大きく影響を与えました。
次の年には「007危機一発(後年改題されてロシアより愛を込めて)」が封切りされて007と言う文字が強烈に頭に刻み込まれてしまいました。これも大好きな「怪傑黒頭巾危機一髪」と「一発」の字が違うのが心に引っかかりましたが、大人になりこれがわざと仕掛けたサブリミナル効果という事が解かりました。仕掛け人はあの水野晴夫先生でした。おや?と思わせて脳の無意識領域に記憶させるものです。あの名作西部劇の「駅馬車」も、もともと「地獄馬車」と命名されそうなのを配給映画会社の社員だった淀川長治先生が改題して大ヒットさせました。「駅馬車」? これだけでは何の馬車か見当もつきませんね。
本日の題名「ボンダリアン」はそこを狙った訳では有りません。念のため・・・・
 最近、必要に迫られてこの「007は殺しの番号」改題の「ドクター・ノー」の字幕作成をすることがありました。この映画の海外3Dバージョンが手に入りましたが音声がスペイン語でした。イタリア、スペイン、フランスでは今3D映画が流行しているのです。ラテン系のバイタリティーで昔の映画を手当たり次第に3D化、カラー化しているのです。コンピュータを使って簡単に出来るそうで、そのほうが商品価値が上がり高く売れるそうです。「アマゾンの半魚人」や「ゴジラ」もカタログに有りました。世の中は物好きが多いと改めて感じました。ネットの普及で普通なら陽の目を見ない物まで簡単に探すことができる様になりました。便利を通り越して恐怖さえ感じ始めています。
話題がずれてしまいました。ボンドに戻ります。そこで改めてネットで手に入れた英語のシナリオを見直したら新たな発見がありました。中学時代には気にも留めませんでしたが映画の序盤からからボンドがウオッカ・マティニを注文するのです。それも今では伝説の「シェイクして。ステアせずに」と、はっきり発言するのです。この伝説の始まりは当時や中年に足を踏み込んだ時代はまったく気が付きませんでした。赤玉ポートワインを甘くて美味しい最高の葡萄酒と決め付けていた時代です。彼我の文明の違いを思い知らされました。追い討ちだったのがドクター・ノーのセリフです。ノー博士がボンドにマティニを勧めます。ボンドが「ウオッカか?」と尋ねると、博士は得意そうな顔をして「当然!」と答えます。大学の頃に見た時は少し知識がついていましたのでマティニはウオッカベースもありか?!と納得しました。高級シャンペンの銘柄、ドム・ペリニオンもこれで敵を殴ってはもったいないのだ、とか生産年によって値段が違うとわかりました。又、飲む適温やビートルズを聴くときは耳栓が必要と「007 ゴールドフィンガー」で、肉には赤ワイン、魚には白ワインと「ロシアより愛を込めて」で、日本酒の燗の適温まで「007は二度死ぬ」で学びました。以来、ボンド映画がいろんな意味で教科書になりました。これから大学時代はホワイトホースのスコッチからヘネシーやカミュのブランデーに入門し、やはりカクテルはシェイクしなければならないと納得しました。医化学で「天使の分け前」の学問的理由を知り、亀の甲の並び方でVSOPの意味が解かりました。医者になり、医学会で地方出張が増えて「地酒」「焼酎」「泡盛」「マイタイ」「テキーラ」等々レパートリーが次第に増えていきました。ついにアルコール度数76度のラム酒、「レモンハート」の味がわかるようになりました。これは消毒用アルコールと同程度でした。これが積み重なり10年前に脳出血を起こして倒れてしまいました。
この時にリハビリの励みになったのがシェイカーを振る練習です。謙虚に場末のバーから始めて(イメージ上)、1年も経つ頃には新宿の高層ホテルの最上階のバーでも通用する腕になりました(イメージ上)。これで上半身のリハビリはほぼ完成です。下半身は私の大好きなジョン・ウェインの決闘シーンの再現です。これはイメージでなく実際に子供用の木馬に跨って左手にピストル、右手にライフルを持って手綱を口にくわえてライフルを頭の上で回転させながら敵に突撃するのです。さすがに病院にあった眼帯は気が引けましたので着けませんでした。シェイカーもライフルも数年間の血の滲むような練習の甲斐があって何とか様になりました。もともと大学では乗馬クラブでしたので出来たら一度本物の馬でチャレンジしてみようと思います。いずれ深夜にナイトスクープでテレビに映ったらアアそうかと思ってください。もう一人の憧れの英雄、チャールトン・ヘストンのベン・ハーの真似は病院のスタッフに松原公園でリヤカーを引かせてもカッコ悪いと思いますので練習はしていません。
リハビリでも何か目標を決めて努力すると軽度のストレスホルモン分泌とエストロゲン、アセチルコリンが脳から分泌され練習に張りが出ます。目標が少しでも達成されるとドパミン分泌や報酬系の賦活とその結果、エンドルフィンが分泌されて幸福感が得られるのではないかと自己考察しました。ちょうど善い事をすると幸福になるのと同じです。いわゆる「感動の共感・共鳴」です。達成感や幸福感が得られるのと、脳内分泌の関連性が考えられました。セロトニンやオキシトシンまでは考察が到っておりません。この時にナロキサンを使って確認作業をしたいとは思っていません。
 話はまた変わりますが、ボンダリアンにとって今年もうれしい年末になりました。007の最新作の「スペクター S・P・E・C・T・R・E」が封切られるのです。シャーロキアンにとって「モリアーティ教授」、明智小五郎にとって「怪人20面相」に勝るとも劣らぬ恐ろしい名前です。ついに来たか!とボンダリアンをうならせる題名です。テロ、誘拐、恐喝、対スパイ活動を生業とする特別組織の頭文字をとって付けた、泣く子も黙る恐ろしい国際組織です。レインボーマンの「死ね死ね団」のような物と理解してください。007映画にとっても遂にやって来た題名です。首領が「エルンスト・スタブロ・ブロフェルド」と言ういかにも東ヨーロッパ出身の没落貴族の末裔をうかがわせる怪しげな名前です。ニヤけたショーン・コネリーのボンドも思わず顔が青く引き締まるような名前です。スペクターの名前は第一作の「殺しの番号」から出てきておりボンドもリクルートされかけましたが、ブロフェルドの顔が画面に出て来るのは日本が舞台の「二度死ぬ」からで丹波哲郎に手裏剣で手に重傷を負わされました。新作ではボンドとの宿命的な関係が明らかにされます。ボンドの銃はワルサーPPKでして(ピンピンコロリ)ではなく(軍・警察用短銃)という意味です。あまり高機能ではないようで屋根から落としただけで2回も暴発しました。この最新作のエンド・タイトルでも次回作で帰ってくると明言されていましたからまだこの先もボンダリアンを喜ばせてくれるでしょう。
この最新作でも「ウオッカ・マティニ」が出てきますが、今度は「ダーティーで」と注文します。今は「グーグル」がありますので数日考え込まなくて済みました。オリーブのビンに入っているジュースを少量混ぜるのです。これでカクテルが濁るのです。それで、汚い(ダ-ティー)なのです。映画ではさらに強調するためにオリーブが2個使われていました。またこれでバーテンさんから「バカボンダリアン!」と口元で皮肉っぽく薄ら笑われそうです。

デイビー宮