劇場公開日 2015年12月4日

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「ボンド、必死に女を護るの巻」007 スペクター kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ボンド、必死に女を護るの巻

2021年10月27日
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鑑賞方法:映画館

6代目ジェームズ・ボンド=ダニエル・クレイグの最終作がやっと公開されたので、彼の過去作を復習鑑賞(その4)。

前作『スカイフォール』の直接的続編。サム・メンデス監督が続投。
まず、ボンドが拳銃を撃つトレードマーク映像が開巻に復活しているのが嬉しい。
オープニングシークェンスで、圧巻の長回しからビル倒壊スペクタクル、ヘリコプターの空中アクションと度肝を抜かれる。
あの長回し、どうやって撮影したのだろうかと思うが、メンデス監督にはお手のものか。

本作では、ボンドガール=マドレーヌ・スワン(レア・セドゥ)とボンドは恋に落ちる。ヴェスパーを陥れた憎き仇として追っていたはずのMr.ホワイトの娘なのだが、ボンドの下半身はそんなことお構いなしだ。
ヴェスパーと叶えられなかった愛の生活を彼女との間に求めたようなエンディングが待っているのだが、いささか歳の差がありすぎるのではなかろうか…

その前に、ボンドが誘惑するスペクター幹部の未亡人をモニカ・ベルッチが演じている。お年を召しても綺麗だ。
彼女の保護をCIAのフィリックスに託すが、前々作のフィリックスが私の中では株を下げているので、信頼してよいものやら…

Mr.ホワイトに娘を護ると約束をして、ボンドは彼の自殺を見届ける。
MR.ホワイトは組織から命を狙われているようで、親娘共々さっさと殺せるんじゃないかと思うのだが、まんまとボンドの介入を許してしまった組織も緩い。
ある秘密を知っているという娘のマドレーヌは精神科医で、彼女が勤める雪山の高級リゾートホテルのような診療施設には、『女王陛下の007』の舞台を想起させるものがある。
そこで拉致されたマドレーヌの奪還に奮闘するボンド。
敵の車を飛行機で追うこのシークェンスが、アイデア満載だ。
この段階でボンドはマドレーヌをものに する気満々だっただろう。命がけで救ったのに猛烈に拒絶された時のボンドは情けなく見えて、良い。
MR.ホワイトが最後に残したキーワードは隠れ家を指していた。
そこでヴェスパーに関するビデオテープを見つけるが、見なかったことにしてしまう。今はマドレーヌを落とす方法を考えよう…て、ところか。
さて、隠れ家で見つけたもうひとつの情報から得たある地点に向かって、ボンドとマドレーヌは長距離列車の旅に出る。
コンパートメント、食堂車両、列車内での殺し屋との格闘など、今度は『ロシアより愛を込めて』を彷彿させる。
しかし、この列車の旅にタキシードを用意しているボンドもボンドだが、マドレーヌもちゃんとドレスを持ってきているあたり、目的は同じだったのだ。
で、お互の願い叶って熱烈なラブシーンとなる。

レア・セドゥという女優、『美女と野獣』の時に「もっと綺麗な女優を使えなかったのか」と失礼ながら思った。本作でも何だか腫れぼったい顔は美人だとは思えない。が、見てるとだんだん可愛く見えてくるから、優れた女優というのは凄い。

ボンドとマドレーヌは、砂漠地帯のクレーター内に建つスペクターの秘密施設で、ブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)と対面する。
二人に正装の着替えを用意して施設を案内するあたりは、『ドクター・ノオ』だ。
猫ちゃんもブロフェルドの膝の上ではないが、ちゃんと居た。
MR.ホワイトの最期を撮影したビデオを見させられ、マドレーヌに必死で「見るな」と言うボンドの焦る姿に、ル・シッフルに拷問されても余裕を示していた男の弱みを見た。

本作のボンドの行動は、前任のMの遺言がトリガーになっているのだが、スペクターの首領ブロフェルドがボンドの養父の息子(つまり義理の兄)だということを前任のMは知っていたととれる。そもそも『カジノ…』から『スカイフォール』までにスペクターの影はなく、本作で初めて今までの悪党たちには共通の上位組織が存在したことが明らかになった(『慰めの報酬』のグリーンは除いて)のだが、それも前任Mは知っていたのか。

“スペクター”と“ブロフェルド”は、権利問題で今まで映画で使えなかったのだが、問題を解決して『ダイヤモンドは永遠に』以来晴れてスクリーン登場となったという事情もあったりする。

ポンドは砂漠地帯のスペクター施設を爆破し、マドレーヌと共に脱出する。
そして舞台はロンドンへ移り、次なる戦いのフェーズに突入する。
後任のM(レイフ・ファインズ)は、実はスペクターの一味だった英保安局の新任トップCによって職を追われていた。
マネーペニーたちとCの計画を阻止するのだが、国際会議でCが提唱した情報集約システムが承認されているので、その点は一体どうなるのだろうか。英国の国際的責任はかなり大きい。

ブロフェルドがマドレーヌを人質に取り、旧MI6本部建物に仕掛けた時限爆弾を起動する。またぞろボンドは必死の行動でマドレーヌを救出する。
ボンドと関わったことで命を落とした多くの女たちとは違い、マドレーヌはきっちり救われて最終作へつなぐのだった。

アクションの面白さ、派手さは前作に負けていない。
旧作へのオマージュも見られ、ボンドはウイットをきかせているし、ヴィランは屈強な殺し屋と不気味なブロフェルドの二段構えでインパクトがある。
ボンドの非公認行動と、ロンドンでMたちに降りかかる危機を並行で描く構成も面白い。
難点は、説得力に欠けるご都合主義的な物語展開だが、それは本作に限ったものではない。

諜報活動から足を洗って身を固めようとしても、ボンドに平穏な日々が来るはずはない。
助手席で笑みを見せたマドレーヌは、苦難の道を選んだことをまだ知らない。

(再鑑賞=2021/10/16 amazon prime video)

kazz
everglazeさんのコメント
2021年10月27日

すごく分かりやすいレビューですね!ありがとうございます。

everglaze