劇場公開日 2013年10月26日

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「タイトルで印象が変わる作品。原題の『The Third Star』がこの作品のすべて。この邦題では主題がぼやけてしまいます。見終わって誤解されている方のために。」僕が星になるまえに にゃらんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0タイトルで印象が変わる作品。原題の『The Third Star』がこの作品のすべて。この邦題では主題がぼやけてしまいます。見終わって誤解されている方のために。

2015年3月25日
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この邦題はどうしてつけたのか?
原題の『The Third Star』では何故いけなかったのか?配給会社の意図を伺いたいです。

それくらい題名が全ての意味を持っていると感じる作品だからです。

『僕が星になる前に』ではこの映画の主題も、彼等の粋な会話も全てがぼやけてしまいます。

このロードムービーの中で、目的地に向かう途中の何気ない友達同士の会話「ところで、そこには(目的地に)どうやって行くんだ?」「簡単さ、夜明けの方向へずっと真っ直ぐ行って3番目の星を右に曲がるんだよ」「違うよ。2番目だよw」「ああそうか、だからいつも迷ってばかりいるんだ」という会話がポイントになります。

この『3番目の星』が原題の『The Third Star』であり、これはピーターパンがネバーランドへみんなを連れて行く時のセリフが元になっています。「夜明けの方向へずっと真っ直ぐ行って2番目の星を右に曲がるんだ」

ネバーランドへ行きたかったのに行こうとしても迷ってばかりでたどり着けず、そうこうするうちに、もうネバーランドに行く年でもなくなってしまった。他人から良く見えようが、悪く見えようが、全員がまだまだ迷ってばかりいる30歳。
現実を受け入れ、現実に立ち向かって行かなければならないと自覚する今日この頃。
それでも抜け出せず、相変わらず迷ってばかり。そんな状態を、この何気ない彼らの会話とそれまでの物語とがシンクロして、『The Third Star』が小粋にこの話に効いてくるんです。

彼等の人生とこの旅もシンクロさせています。途中目的地はあるようで曖昧に思え、寄り道をしたり、アクシデントがあったり、仲間同士でぶつかったり、ふらふら迷ってばかり。 よくあるパターンというか設定ですが、シニカルでウィットに富んだ会話が『ありきたり』を吹き飛ばしています。

旅の始まりの頃彼らはネバーランドに向かうまるで少年のように描かれています。
前述した会話でも、行き先がまだ『ネバーランド』であることが判ります

『The Third Star』で迷ってしまい、ネバーランドに行けなかったため子供のままでいることの許されない、何となぁーく大人になってしまったけれど、何処にもたどり着けない30歳の男達。
子供でいることに未練があり、大人でいるにはまだ居心地が悪い彼等。
人生の目的地なんてあるようでないようでいつも曖昧で、何処に行って良いのかも判らない。そんな彼等が主人公Jamesの目的地を頼りに進んでいく、この映画がロードムービーだったのは必然だと思えます。

友人たちはこの後迷いから抜け出し、『受け入れなければならない現実』と折り合う時間がある、でもJamesにはその時間が残り少ないのは明らか。

Jamesは誰よりも先に『The Third Star』を越える旅に出る決意と覚悟をします。
彼の『受け入れなければならない唯一の現実』に向かって。

Jamesの「世界で一番好きな場所」は『2番目の星を右に曲がったネバーランド』ではなく、みんなで通った『3番目の星を右に曲がった先』迷いを越えた場所なんでしょう。

そしてJamesは、『The 2nd Star』を通ってネバーランド(子供の国)へみんなを連れて行くピーターパンではなく、『The Third Star』を越えて現実へとみんなを連れて行く大人への道案内人なのです。

Jamesは彼等の中で『The Third Star』(大人への道しるべ)になるのではないかなあと思えました。

この映画には背景にずっと題名である『The Third Star』があり、
『ピーターパン=子供の世界』と『大人の世界』
『迷い』と『現実』があり、
『The 2nd Star』と『The Third Star』の対比が存在するのです。

だからこそ、この映画はこの原題が全てだと思うし、この題名がこの映画全体を包んでいる。
細かく要所要所で効いてくる。
そのセンスの良さをこんな邦題で壊さないで欲しいと思いました。

この邦題こそが、この映画の主題を迷わせる
それこそ『The Third Star』になってしまっています。

『点と線』にみられるように、センスのよい作品は題名にも表れる時があります。

それをいたずらにいじってはいけません。

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にゃらん