「【いる】」白ゆき姫殺人事件 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【いる】
僕の周りにもいる。
僕に話すことと、他の人に話すことが異なるとか、自分が窮地に陥ると突拍子もないウソをつくとか…。
それも、一度や二度とじゃなく。
聞いた話だと、休日に出勤しては同僚や先輩の営業情報をくすねて、挙句の果てに、ブランクの領収書をお客に発行して、その人が横領に利用したという事件まで発展したケースもあった。
こういうタイプは、人を騙し通しているとか、状況を上手くコントロール出来ていると本当に思っているのだろうか。
僕には、常に何かに怯え、そのせいで、こうした行為を繰り返しているようにも見えたりする。
きっと、皆さんの周りにもいるに違いない。
しかし、湊かなえさんは、このストーリーと登場人物を思いつくほど、世の中に失望しているのだろうか。
それほど、出てくる登場人物がろくでなしというか、闇を抱えているというか…。
加えて、傍観者であるネットでつぶやく連中も同様だ。
まあ、上っ面の見たい出来事にしか注目しないとか、それ以外は読まないとか、そういう受け取る側の問題もあると思うが、某ネット・ニュースなんかの場合、明らかに、トピックの重要性というより、読まれてナンボの広告収入だけを考えているようなチョイスだったりもする。
赤星と根っこは同じように思う。
テレビのワイドショーの内容についてだって、コロナを巡って、橋下徹氏がこう人を攻撃したとか、玉川徹氏がこんな風に世間を煽ったとかばかりで、4人のノーベル賞受賞者の科学者が、政府に重要な、そして、バカな政治家でも分かりやすい提言でテレビでも説明したことなど、全然取り上げたりしない。
アプリにスマートという名前を冠しているのだから、もう少しクレバーでも良いと感じる。
美姫も決して善人の代表として描かれているわけではない。
孤独でお人好しなところがあって、悪意のある行動をとるわけではないが、自分の好きなことについては、周りが見えなくなって、貪欲と思われるような行動も取る。
年末のNHKの「少年寅次郎」と映画「大コメ騒動」を観て、井上真央さん見たさで、鑑賞してみたが、あの屈託のない可愛い笑顔などあろうはずもなく(分かっていたはずだが)、現代社会を考えてしまうが、ちょっと辛くなった。
最後の美姫と夕子のやり取りで少し救われるぐらいかもしれない。
とにかく、どいつもこいつもって感じだが、登場人物の違和感を、役者さん達がよく表していて、若手中心だけれども、たいしたもんだと感心もした。