「ロマンチックにライトアップされた東京駅を観に行って、ゆずの唄を楽しんじゃおうね」すべては君に逢えたから Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
ロマンチックにライトアップされた東京駅を観に行って、ゆずの唄を楽しんじゃおうね
一年の中で、一番華やかでロマンチックな気持ちに酔いしれる、誰もが何となく待ち焦がれる季節、それがクリスマス。
映画の中では、数組の人達がその日を迎える迄の日常を追った、登場人物それぞれの愛のカウントダウンの物語。
オムニバスストーリーと言う短い話の積み重ねの物語なので、一つ一つのエピソードは余り深く掘り下げて物語を描ききれないのは、致し方ないのだろう。
母親を知らない、孤児の実母を想う愛の物語。そして、余命宣告を受けた父と息子と妻のエピソード。
東京駅舎の100周年記念作品と言う事で、東京駅を舞台に繰り広げられるエピソードの数々。
東京駅がクリスマス用にライトアップされて、東京駅その物が物語の主人公と言っても良いこの映画は、とても映像的に美しく、駅がロマンチックに見えて素敵だ。
東京駅は普段は、ビジネスマンなどで賑わう大都市、東京の中心駅だけれど、こうして駅その物にエピソードを絡めてみると、東京駅と言う存在自体も、一つの生き物のように、何となく愛おしい存在になる。それは普段通勤で利用する駅として通り過ぎていくだけの存在に留まらない、何だか、多くの人々を見守る、神様のような、暖かな存在に東京駅が見えてくるから、素敵だ。
どの話もみんな、切なくて、胸がキュンとなって、涙がジンわりとこぼれ落ちる、邦画ならではの人情に、ほろりと訴える映画の誕生と言う作品だ。
そんな東京駅から、新幹線を利用した距離恋愛のエピソードは、被災地復興に携わる若い青年と東京暮らしの彼女の切ない、遠距離恋哀喜こもごものお話で盛り上げようとしているのだろうけれど、こう言う設定は逆に採って付けたような感じで、痣とさのみが、全面に出て、感動は遠のく。
そして、多分この映画の1番手は玉木宏演じる黒山のラブストーリーがメインストーリーなのかも知れないが、この玉木が演じる黒山の物語が一番陳腐で興ざめした。
多分、クリスマスと東京駅を舞台に繰り広げる、愛を伝える物語と言う事で、多くの愛の物語を描いてみようと、欲張り過ぎなのだろう。
ひたすら、水で薄めたようなエピソードの数々は、感動からは、程遠い。
新幹線運転手の宮崎家族のエピソード一つをもっともっと丁寧に積み上げて、この家族だけの愛の物語で終わらせても良い作品に充分成り得たと思う。
そして、倍賞千恵子の存在感有る芝居がこの作品を豪華にしてくれる。
東京駅に関係が有る、時任三郎の新幹線運転手の物語のみで、本当に充分だった気がする。