「少女の挫折と再起を分かりやすく優しく描いた良質の童話映画」魔女の宅急便 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
少女の挫折と再起を分かりやすく優しく描いた良質の童話映画
宮崎駿のアニメ映画があるのに、これを実写映画化する意味があったのか…と、公開当時は思った。
オーディションで選ばれたという主演の女の子は確かに可愛いとは思ったが、小芝風花はまだ無名に近かった。
主演に決まった直後に彼女は非難を浴びたりしたようで、アニメ映画のイメージを大事にしたいファンの気持ちは分かるが、少女女優に何の責任もないのに酷い人がいるものだ。
ジャパニーズ・ホラーでハリウッドにも名前を売った清水崇にとっても、かなりハードルの高い挑戦だったはずだ。
改めて観てみると、やはりジブリ版のスペクタクルには遠く及ばないものの、極めて善良で良質の児童向け映画だった。
ちゃんとロケ撮影されていてるのに、オープン・セットであれだけ無国籍感を出しているのは素晴らしい。
瀬戸内海の小豆島がメイン・ロケ地で、島の高台から見下ろす海岸の町はアニメ版に負けない異国感がある。
クリーニング屋などが並ぶメイン・ストリートは岡山市の西大寺で撮影されていて、実際の通りに並ぶ建物をカラフルに飾って、ファンタジックな商店街を作り上げている。
これらは美術の勝利だと思う。
✶美術監督∶岩城南海子
小芝風花は初主演(だと思う)にしては、無難に自然体で演じている。13歳の見習い魔女の設定で、当人は16歳だったとのこと。ルックスが少女だから違和感がない。
ネコとカバのCGは当時の技術水準の問題だと思うが、あまり良くない。だが、それが目立たないように構図やアングルが工夫されている。
シンガーのYURIを歌えなくなった歌手役で出演させ、嵐に打たれながら歌わせたのはあまり意味がなかった気がする。
自分自身に疑問や不安を抱くとたちまち自信を失ってしまう。そんな壁にぶつかるのが人生で、何かをきっかけにその壁を壊して越えることはあり得るのだ。そんなテーマを主人公のキキと歌を忘れた歌手に投影しているのだけれど、ここはキキだけに集中してもよかったのではないか。
あるいは、歌手がキキを見て自分の殻を破る何かを掴む過程をもう少し丁寧に見せてくれれば、より感動的だっただろう。
✶脚本∶奥寺佐渡子・清水崇