「君の顔が見たい」百瀬、こっちを向いて。 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
君の顔が見たい
まるで大林宣彦か岩井俊二の作品を見ているような、青春映画の佳作。
瑞々しさと切なさと…
新人賞を受賞した作家のノボルは、母校で講演をする為久し振りに帰郷、高校時代のある時の事を思い出す…。
“レベル2”である高校一年生のノボルは、“レベル90以上”の幼馴染みの先輩・宮崎からある頼み事をされる。
宮崎は学校一のマドンナ・神林と付き合っていたが、もう一人女の子が。二股疑惑が流れないよう、ノボルにその女の子・百瀬と付き合ってるフリをしてほしい、と。
まあ、そりゃあ好きになっちゃうわな。
明らかにノボルは童貞くん。女の子と付き合った事も無いだろう。
で、付き合うフリをする百瀬はなかなか可愛い。結構サバサバした性格だけど。
恋人同士に見せる為校内でも手を繋いだり(学校の外に出たら即手を離されるけど)、Wデートに来ていく服を選んでくれたり、母親と仲良くなってパイナップル入りカレーを美味しいと言ってくれたり、肩を貸してくれたり。
が、幾ら命の恩人の先輩の頼みとは言え、演技を続ける事に悩みが…。
つまりそれは、知らぬ間に芽生えていた百瀬への恋心。
違った意味で悩みを抱えているのは、百瀬。
勿論、ノボルの事など好きでも何でも無い。
彼女が好きなのは、宮崎。
好きな先輩の為に一肌脱ぐ。
ほんの一秒の両想いでもいい、ずっと待ち続ける。
つまりそれは、一方通行の片想い。
多分その事は自分でも分かっている。
分かっているから、明るく振る舞う様が哀しい。
本当にノボルの事は全く…?
あの時、こっちを向いてくれなかった顔が見たかった。
“レベル90”でも最低なのは、宮崎。
二人を散々利用する。
彼も自分が酷い事をしてるのは分かっている。
だから、ある時ノボルがさすがに拳を握っても、「殴れよ」。
だから、ノボルに「それでも尊敬してる」と言われ、彼に嫌悪感を示す。
劇中引用される『舞姫』からの言葉、“ニル・アドミラリ”。
また、結局こういう人間が、“レベル90”のまま成功する。
マドンナ・神林は安全圏と言った所か。
男子生徒の憧れの的で(勿論“レベル90以上”)、外でお菓子を食べる事を禁じられてるほどのお嬢様。
優しく美しく、人を疑ったりせず、子供のように純粋。
宮崎に拾ったホオズキをプレゼント。
…が、最後、まさかこのホオズキにゾッとさせられるとは!
ホオズキの花言葉は…
「幸せだよ」と微笑むその姿に、女の恐ろしさを見た。
早見あかりはももクロ在籍時を全く知らんが、なかなか女優として光り始めるものを感じた。
ノボルくんではないけど、ミニスカから覗く生足や制服の胸の膨らみはそそられる。
あの時、言えなかった事、見れなかった君の顔。
ラストカットこそ、君の顔を…。
尚、自分では“同類のレベル2”と言ってるけど、間違いなく“レベル100”は田辺くん。
いちいちイイ事を言う。
宮崎先輩は彼の爪の垢を煎じて飲むべきだ。