「3回観に行った」あの頃、君を追いかけた(2011) よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
3回観に行った
同じ劇場に公開中3回観に行った。3回目のラストでもまだ涙は止められなかった。
男の子というものはとても稚拙である。その幼稚さが同世代の女の子にはときに理解に苦しみ、すれ違いの原因となる。これは男の子を育てる母になった人にぜひ観てもらいたい。息子の幼稚さ、恥ずかしいくらいにバカで頭の弱いところは、男の子に共通の特質なのだ。
様々な演出が明るくポップで、これが映画のトーンを決定づけている。なんともテレビ的で、しっかりとした映画的な語り口を期待してはいけない作品である。
では、なぜこの作品にこうまで魅かれるのか。それは、この作品の主人公がギデンズ・コーそのものであり、この映画を撮っているこの監督自身が、いまだに主人公コートンそのものに他ならぬ、幼稚で恥ずかしい人物であるからである。誤解のないように言っておくが、監督を貶しているのではない。男の子の経験する恥ずかしさ、馬鹿らしさを素直に映画として表現し、また、自分自身もそこからあまり成長していないことを率直に認めているところに面白さがある。これを表現しようと映画製作に挑んだコー監督は、まるで大学での武闘会開催をプロデュースしたコートンそのものではないか。もちろん、ヒロインを演じたミシェル・チェンは、あまりの幼稚さに怒って帰ってしまうことはなく、めでたくクランクアップにたどり着いたということだが。
観終わって数日経つと、また彼らに会いたくなるのだ。なんの目的もなく下らないバカやって、それでもお互いのことを気にかけている。人生の大切な瞬間とはそんなものではないだろうか。特別な恋愛や成功譚ばかりが輝ける青春ではない。そういう多くの人の恥ずかしく下らない青春を、輝いたものとして振り返ることができるからこそ、多くの観客が足を運んだのだろう。