「戦う母、リプリー!」エイリアン2 完全版 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
戦う母、リプリー!
最新作『エイリアン ロムルス』鑑賞前にBlu-rayで復習。
前作から7年後に公開された続編の、さらに4年後に公開された「完全版」は2時間半に迫る長尺だが、ジェームズ・キャメロンはこれこそが本来見せたかったものだと語っている。
初期版でカットされた場面のうち、最も復活させたかったのはリプリーの娘について語られる場面だと思う。
11歳の誕生日までには帰ると約束した愛娘は、既に2年前に66歳で亡くなっていたという…。(夫についての言及はない)
惑星LV-426の開拓基地と開拓民の様子が追加されていて、ここでウェイランド・ユタニの社名プレートがハッキリと映し出される。
開拓基地内には『シャイニング』(’80)のダニー君を思い起こさせる三輪車を漕ぐ少年がいたりして、後に唯一の生存者として登場する少女ニュートが唐突に感じないようになっている。
このシークェンスで、例の馬蹄型宇宙船の残骸をニュートの父母が発見し、父親がエイリアンの幼体に貼り付かれる。その後は描かれていないが、父母と、一緒にいた兄まで犠牲になったことは明白なのだ。
リプリーたち一行がLV-426に到着してニュートを保護したあと、リプリーが娘の話をニュートにする場面も追加されている。
これらによって、リプリーとニュートの疑似母娘関係が構築されていく背景がより印象深くなっている。
1970〜80年代だと2時間を超える長い作品はあまり歓迎されなかったから、アクションとして面白い場面を活かした劇場公開版の編集は妥当だったのだろう。
リプリーが前作よりも強くなったと感じるのは、前作は自身が生き残るために恐怖と戦いながら頭脳戦でエイリアンを排除したことに対して、本作は少女を助けるために肉弾戦でエイリアンを倒す戦いをしているからだ。
その力の源に、我が娘を投影した少女ニュートを救うというリプリーの強い母の意志があったのだ。