最愛の大地のレビュー・感想・評価
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アンジェリーナ・ジョリー初の劇映画監督作品だが、クオリティは巨匠!!
劇映画としては、今作が初監督作品となるのだが、実は2007年に『A Place in Time』という実験的なドキュメンタリー作品を監督している。『A Place in Time』は日本では未公開となっているが、どんな内容かというと、アンジェリーナ・ジョリーや彼女の知り合いであるアン・ハサウェイやジャイモン・フンスー、ジュード・ロウなどのハリウッドスター達が難民キャンプや孤児院を訪ねるというもので社会派なものであったが、セレブの自己満足や売名行為と言われ作品としては、あまり評価されていない。 アンジェリーナ・ジョリー自体がもともと、セレブの自己満足なんて言われ方をしてきているのだが、そんな雑音を跳ね除けての初劇映画。しかも今作も社会派な内容なのだ。 どれだけ自己満足などと罵倒されても、アンジーの描くものは、戦争の悲惨さやそれによって引き裂かれた家族や絆、子供たちが犠牲になってしまう環境などと一貫して社会派なものばかりである。 セレブがカメラを同行させて、国の抱える問題や悲惨さを伝えることに関して、批判する人は多いのだが、逆に開き直って、売名行為だとしても財力や知名度のある人が行くことで助かる人達は実際にいるということだ。日本でも3.11のボランティアとして名乗り出た人達の中には、税金対策だったり、売名行為だったりする人は実際にいたのだが、その人達の行ったことで実際に助かっている人は多いわけで、お金持ちだからやれるんでしょ…なんてネットで批判ばかりして何もしない人より全然良いのだ。 国連UNHCRの親善大使を長く務めてきた彼女のワールドワイドで個性的な視点がドラマチックでありながら社会派な作品を作り上げている。極端な話、元々の理由が売名行為であったとしても、アンジーの作品で心を動かされて行動を起こす人が少しでもいれば、それはアンジーの功績と言えるのだ。 少し脱線してしまったが、映画の内容に戻すと、正直言って今作は傑作である。とても初劇映画作品とは思えないほどのクオリティで、アンジーが監督していると知らないで観るとヨーロッパのアーティスト監督が撮ったのではないかと思うほどだ。 「昨日の敵は今日の友」という言葉があるが、今作で描かれるのは「昨日の恋人は今日の敵」状態である。紛争によって敵味方に分かれた男女の悲劇を描いた作品ではあるが、この2人の関係性が実に巧妙に作られている。 「恋人同士」といっても、実はそこまで長い付き合いではないのだ。そのまま付き合っていたら、結婚していたかもしれないが、別れていたかもしれない…そんな状態の恋人同士だったのだ。 この微妙な距離感は、2人の心情に大きく影響している。「愛しているから国なんてどうでもいいから逃げよう!」ではなくて、深い仲ではないだけに国の方針や使命感と恋心、緊張感が極限の状況下で常に揺れ動く心情がとても繊細に描かれていて、人間ドラマとして見ごたえのある作品だ。 「好き」だと言うことが許されなかった時代を生きるしかなかった男女の切なくも美しい悲劇はアート的でもありながら、2人の視線を通して紛争の悲惨さを巧妙に描いている。 アンジーの監督作品は、その後の『不屈の男 アンブロークン』や『白い帽子の女』でも微妙で繊細な心の動きを描き出すことに成功している。 『マレフィセント2』など女優業は、最近上手くいってないアンジーだけに、女優業よりも、監督として活躍する方が今のアンジーには合っている気がする。
結構悲惨
アンジー初監督作と気楽に観始めたらどうしてどうして、そんなに昔でもない(92~95)ボスニアの内戦をこんなにも教えてくれた話はありませんでした、というくらいがっつり「戦争映画」でした。 戦争映画要素より戦争に引き裂かれていく恋人の話。以前は普通にダンスホールで逢瀬をしていたのに、戦争が始まると支配と服従になり、関係が深まれば疑心も深まっていく関係は普通の恋人同士より亀裂が深く取り返しがつかなくなる。ましてや民族浄化を謡うセルビア人には、ムスリムは支配すれど対等ではない。というか、あんな一方的な支配(まるでナチスがユダヤ人に行ったかのような)がこの近年にあったとは、脚色もあるだろうが驚きました。 ダニエルの親父が行っていた虐殺とか、ホロコーストのそれと違わへんやん!と思ったのは自分だけでしょうか。 ボスニア内戦の映画としてはかなり後発な作品だし、アメリカでもそんなに公開されていないので、もっと多くの人に観てほしい映画です。
戦争は物語?
子どもらに、「何キロも歩いて毎日水を汲みにいかないですむ所に生まれてよかったね。」といい、「戦争の中で生まれ、戦争の中で死んで行く人生もあるんだよね。」といいながら、ニッポンで平和に子育てをした。命をかけてまで貫く正義など到底理解できないけれど、命がけで大切にするものが家族以外にある人がいることは理解できる。 以前ボスニアの内戦映画だったかちがったかわからないけれど、内戦の風景が言葉少なに延々つづく映画を見た。もう一度みたいけれど題名がわからない。色彩のない瓦礫と化した風景がどこまでもどこまでも続いた記憶がある。(どなたか題名ご存じありませんか?) 戦争は悲惨さや理不尽さで美化しないでほしいと思った。時代的にも距離的にもずいぶん温度差がある気がした。ボスニアの内戦を題材にした物語。主人公が描く絵は素敵だった。美術館も行ってみたいと思った。
銃声が、、長い、、、
生きることの喜びと悲しみ、憎しみあうことの愚かさ、他者を辱めることの非人間性、誰かを守ることの難しさと尊さ、これら全てを、ダニエルとアイラは象徴しているように見えた。 ダニエルの「君がセルビア人だったら」の言葉と、それに対するアイラの無言の拒絶(という風にわたしには見えた)が示すように、ふたりの肩にのしかかるものは同じものでありながら民族対立の構図の中では決して交わらないものであり、胸が痛むようだった。 劇中鳴り止まない銃声に途中から嫌悪感を覚えたけれど、あの中で生きることを強いられた人たちが現実にいると想像するだけで、目の前が真っ暗になるようだ。
この映画をみんなに観てほしい
アンジー初監督・脚本作品ということで、公開前より観にいこうと決めてました。 テーマが重たいからなのかあまり全国でも数ヶ所の上映でいつもいく映画館では上映してなかったので遠出してみにいきました。 テーマや内容は引き込まれるものがあり、当時の人たちの苦悩やつらさ、戦争の酷さ、人間の悪の部分が描かれていました。 こんなふうにこの時代を生きねばならなかったひとたちがいたんだと感じることができて観てよかったと思いました。 悲しいけど、素晴らしい映画でした。
戦争が人間を悪魔に変えてしまう怖さかな(*_*)
報復行為の繰り返しが民族間での争いには、つきものなんでしょうけども、それが大量の虐殺やら他民族をレイプすることを正当化しては、ならないことが映画を鑑賞して改めて感じました! 難しい内容を見事に映画化されたことに凄いと思います!
いまを考える
きのう11:40の回の行ったのだが、満員で入れず、 今日は14:40の回に行ったら、あと2枚しか残っていなかった。 こういう政治的な映画が注目を浴びていることをうれしく思った。 満員のなか、やはり女性が90%、意識の高い人たちなんだと感じた。 僕がこの映画で感じたことは大きく言って3点。 ①アンジョリーナ・ジョリーの心意気と力量 ②戦争はやはりダメだということ ③いまの日本は怖い方向にいっているんじゃないかということ ①については、こんなに重いテーマと陰影の深い映像を 緊張感が途切れることなく、作り上げたその力量。 そして、やり遂げなければならないという使命感。 ドキュメント的なストーリーのなかにもエンターテイメントと しても見るべきものがあったことは素晴らしいと思った。 ②については、戦争というものの非人間性を表現してこと。 女性を陵辱してやまない兵隊たち。普段はいい人なんだろうに。 男というものの原初的な生態というものは、 暴力と性というものなのではないかと思わざるえないと感じた。 だから、そういう状況に陥る前に、理性とか悟性とかがあるうちに、 戦争を食い止めねばならないと強く思った。 ③そういう意味で、いまの日本は危ないと感じる。 憲法解釈で変えようという集団的自衛権。 これを許せば、ごく普通に戦争ができる国になるのではと危惧する。 やるのであれば、堂々と憲法改正の手続きに従うべきだろう。 そんなことまで、考えさせてくれた有意義な映画だったと思う。 もっと、もっと男も見るべき映画であることは間違いない。 アンジョリーナ・ジョリーにありがとうと言いたい。
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