「残念!」スター・ウォーズ フォースの覚醒 takahiraさんの映画レビュー(感想・評価)
残念!
ネタバレご注意ください。
シリーズへの愛ゆえに苦言を呈したくなる出来でした。最初のエピソード4から美術と特殊効果を進化させながら描いてきたルーカスの豊かな視覚的世界観が断絶されていると思います。
特にエピソード1からの3部作の惑星、都市、建築、インテリア、宇宙船、ドロイド、衣装、キャラクターのクオリティの高い膨大なデザインは素晴らしかった!しかし今回は新デザインである十字のライトセーバー、タコの化け物、新シス親玉などの造形のユルさが気になります。
何より地球丸出しの環境設定がひどい。ダークリアリズムを持ち込むにしても、地球的なリアリティは不要です。CGの使い方の問題なのか、当時は仕方ない手法だったと思われるエピソード6の着ぐるみショーのような雰囲気になっています。斜めの光速移動やファルコン号の飛行も撮り方がかっこ良くありません。
そんな感じで今作は全体的に印象的なカットやシーンがほとんどありませんでした。
ミッションインポッシブルではキレを見せるエイブラム監督ですが、説話にも問題があり、無駄と思われるカットが多く、もたついて緊張感がありません。ルーカス監督であれば省略を駆使してクリアに描き、短縮した時間の代わりに、シーンの切り替え時などに、キャラクターが動きまわる複雑な背景にて社会と生活のリアリティを見せてせてくれます。
今回は逆にバストショットや会話による必死な説明が多く、そこはもういいから!と思います。オマージュともとれる焼き直しシーンも退屈なので、そんなことよりクリアでスピーディーな説話と丁寧な絵づくりによる美しい世界観をしっかり踏襲して欲しかった。
脚本によるキャラクター設定も良くないです。どのジュダイも成し得ていない光線銃の弾を静止させたカイロ・レン。相当な使い手と思ってしまいますが、後半の弱さは同一人物とは思えません。素性の知れないフィンでもそこそこ戦えてるし。
主人公二人に特殊な力があることの表現だとしも、弾はライトセーバーではじくくらいで、未熟で揺れているダークサイドのジュダイ程度の設定でよかったのでは?と思います。他にもツッコミどころは満載です。
唯一主人公レイにむやみに台詞を与えず、孤独でミステリアスな能ある鷹という感じにしたところはよかったと思います。
地球丸出しコンセプトとつながることですが、
映画全体を牽引してきた、待ちに待ったルークの登場シーンもひどいです。険しい観光地のような岩壁で海を見ている姿は伝説の人物の登場に相応しくないのではないでしょうか。全光で強風の中、どアップで振り返る年老いたルークは、撮り方としても可哀想です。最後の空撮も音楽PVみたいで、スターウオーズのエンドテーマが流れることに違和感があります。
今回は気になることが多すぎて、いつものように世界に浸ることができませんでした。
穏やかに書いたつもりですが制作陣には怒りと失望を感じています。スターウオーズ愛のないスタッフは一掃し、次回作ではルーカス監督の絵づくりへの執着とクリアでスピーディーな説話をリスペクトして、これまでの世界観を凌ぐほどの興奮を与えてくれることを期待しています。