「原点回帰の冒険譚と因縁噺」スター・ウォーズ フォースの覚醒 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
原点回帰の冒険譚と因縁噺
『ジェダイの復讐』の物語から30年。
帝国軍は一旦は解散したものの、ファーストオーダーと名を変え、フォースの暗黒面と組織的軍事力により、惑星連合を掌中に収めようとしていた。レイア・オーガナ将軍が率いるレジスタンスは、惑星連合と手を組み、ファーストオーダーに対抗していた。一方、ルーク・スカイウォーカーは・・・というのが、オープニングの宇宙彼方に消えていく前説の内容。
ここにジョン・ウィリアムズが指揮する「スター・ウォーズ」のテーマ曲が流れ、一気にスター・ウォーズの世界に引き込まれてしまう。いまから冒険物語が始まりますよ!の高らかな宣言。すこぶる好い。
この映画のストーリーは善悪どちらが早くルーク(の居場所を示した地図)を手中にできるか、というハナシで、ヒッチコック監督がよよく言う「マクガフィン」を巡る冒険譚。
「冒険譚」がスター・ウォーズの一方の本流ならば、もう一方は『帝国の逆襲』のクライマックスから始まった「因縁噺」。親と子の確執。その確執が招く善悪それぞれの決断と、国盗物語。
この冒険譚・因縁噺の両方が上手く噛みあうことがスター・ウォーズの的な面白さなのだ。
そして、冒険譚・因縁噺・国盗物語の三題が揃えば、自ずとそのストーリーは定型化されてしまうが、講談や落語や昔話の類は、同じような話を繰り返されても(いや、繰り返すことで)面白さは減ずることなく増大する。さすれば、この『フォースの覚醒』、初期三部作と話の展開が似通えば似通うほど、かえって面白くなるというもの。脚本のローレンス・カスダンは、そこのところをわかって、このようなストーリーとしたのだろう。
ただし、初期三部作では三作かけてゆっくりとした語り口だったものが、テレビ出身のJ・J・エイブラムス監督と共同脚本のマイケル・アーントが性急な展開にしてしまったのは、少々残念なところ。もう少し鷹揚に構えても良かったのだけれど。
その他、新悪役のカイロ・レンがあまり強そうでないなど瑕はあるが、彼の複雑な事情も考慮して、エピソード8及び9に期待する。