「奇跡のワンシーンが映画の価値を決める」東京難民 Chisaさんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡のワンシーンが映画の価値を決める
学費滞納で大学を除籍になり、家賃未納でアパートから追い出された際に持ち物は全て没収され、着の身着のまま新宿の街に放り出された時枝修(中村蒼)。
1泊1,500円のネットカフェに泊まり、日雇いのティッシュ配りや治験のアルバイトで食いつないでいたが、ある日受けた職質で警官から屈辱的な扱いを受け、自分の現状に絶望する。
そんなときに知らない女に飲みに誘われ、奢りだと思ってついて行ったホストクラブで酔い潰れていた隙に女はトンズラ。
莫大な飲み代を支払うためその店で働くことになるが、情を捨てきれない性格の修は、ツケを払えなくなった客と従業員の逃亡を手伝って自身も店側から追われる身になってしまう。
地方の建設会社の寮でひっそりと暮らしていたが、やがて店に居場所がバレてボコボコにされ、記憶喪失になってホームレス生活を余儀なくされる。
「自分はもう終わっているーーー」
何もかも失った修は、社会の底辺から這い上がることができるのか。
ほんのちょっとしたきっかけで、誰もが飲み込まれ得る格差社会の闇。
底辺の人間を救済するようでいて、一度入ってしまえば簡単には抜け出せない貧困ビジネスのカラクリ。
無知であることって、楽だしある意味強いけど、そのまま大人になっちゃうのは本当に怖いよね。
あとはあの、「大学を除籍になってからたったの半年で人間そこまでいくか」っていうスピード感が堕ちていく人間を見ている側の絶望を加速させるようで、すごく秀逸でした。
でもさ、なんで青柳翔が中国でヤクの売人をする羽目になり、茜さんは風俗に売り飛ばされたのに、諸悪の根源であるルイは田舎でのっそり暮らしてるの?
まじ不快なんですけどー
でもその不快感が何よりもリアル。
説明つかない理不尽な現象だらけなんだよねきっと世の中ってさ。
そう考えると、私はまごうことなく幸せだ。
でもさでもさ。
青柳翔の銀髪ホスト姿には爆笑!
なにあのダメージジーンズの似合わなさ・・・!!!笑
最初全然誰だかわかんなかった。
中村蒼はほんとにいい役者さんだなぁ。
「BECK」のドラマーが今やホームレスか・・・とかカオスな感慨に浸るなど。
こないだのMステを見たとき、「FOREVER LOVE」という一曲にはX JAPANというバンドをこれからも永遠に存続させるだけの価値がある、と確信したんだ。
この映画も、茜と再会した修の、
「生きていてもいいですか?」
っていうセリフだけで、観る価値はあったな、と思った。
あれは本当に心にグッとくるいいシーンだった。