「無理が目立つ展開」宇宙戦艦ヤマト2199 第七章「そして艦は行く」 tochiroさんの映画レビュー(感想・評価)
無理が目立つ展開
第一章を観た時は、そのレベルの高さを喜ぶと共に、最後までそのレベルを維持できるのか不安でもあったが、旧作のテイストを残しながらも不備だった点を改善していくその姿勢には十分満足させられた。
無事にシリーズ終了を迎え、困難だっただろうプロジェクトを最後まで完遂してくれたスタッフには、尽きせぬ感謝と敬意を捧げたい。
ただ今回は今までと比べて無理の目立つ展開が多く、特に下記の3点はそれが顕著だと思う。
1.第2バレラスの波動砲(デスラー砲)の制御プログラムに森雪が細工する時に、重要設備のはずのその制御室に誰もおらず侵入警報も鳴らない。また制御プログラムに細工されたことについて何も警告が出ない。その結果第2バレラスはあっけなく壊滅する。
2.第2バレラスが破壊された後、その膨大なデブリの中から発信機も付けていない雪を、古代進が何の苦も無く見つけてしまう。雪と精神感応しているらしいユリーシャが先に見つけるならともかく、これは無理がありすぎる。
3.古代守の精神(残留思念)が、コスモリバースシステムのトリガーになっているが、それを進が雪の死を悲しんでいるのを見て、雪を生き返らせるために発動させてしまう。この時点ではその後コスモリバースシステムが再起動することは分かっていないのだから、これでは弟可愛さに地球を再生させるという任務を放棄し、それまでの犠牲者の願いを蔑にしたと言われても仕方がない。旧作では古代進が「恐怖の欠陥人間」と呼ばれたが、今作では古代守がそう呼ばれるにふさわしいと思えてくる。
この後結局沖田艦長の死をきっかけに何の説明もなく(真田さえも「奇跡だ」で片づけている)、コスモリバースシステムが再起動してハッピーエンドになるのだが、これも無理がありすぎる。こんな無理をして作品に歪を生じるなら、「さらヤマごっこ」で雪を殺す必要などなかったのではないか。
なお本編とは関係ないが、デスラー総統を見限ったヒスが逃げ遅れたヒルダを庇っていたのは、「マクロス」で爆発から少女を守ろうとした兵士の姿と重なって好もしかった。
もう「白色彗星帝国編」が制作されることはないだろうから、第一章からのBDを観て余韻に浸りながら、第25話の完全版が収録されたBDが届くのを待つことにしたい。