カジュアリティーズのレビュー・感想・評価
全17件を表示
演出は最高!
カジュアリティーズ、とは犠牲者のこと。日本語にも歪曲表現というか、直接的でショッキングな言葉をもっと柔らかで刺激の少ない言葉に代替したようなものがあるけど、英語も一緒。多分どの言語でもそう。 「戦死者」「被害者」だと強い意味を持つ漢字が入るけど、「犠牲者」「戦没者」だと少し薄れた感じがするでしょ? ベトナム戦争に限った事じゃないけど、戦争の被害の大きさは、情報の受け手に配慮され、特に被害をもたらした側の都合で、悲惨さをダイレクトに伝える機会すら奪われる。 英語casualtyの語源には「偶然の」という意味が含まれ、拉致された少女も、偵察行軍の5名も、もっと言えばベトナム戦争そのものすら、「たまたま運悪く起こった」出来事、というエクスキューズを持たされる。 それが「カジュアリティーズ」という言葉の持つ力だ。 カジュアリティーズ、という言葉に置き換えられてしまった犠牲の、本当の中身を、この映画は描いている。「運が悪かったから、仕方ないのさ」と割りきれない主人公の目線を持って。 「犠牲者」という曖昧な表現に隠れた戦争の真実を突きつけようとする、そんな映画だと感じた。 ただ、映画としてはイマイチ。デ・パルマらしいサスペンスフルな演出は面白いし、主演のマイケル・J・フォックスも好きだし、ベトナム戦争ものも大好きなんだけと、何だかパッとしない。 これは個人的な意見だけど、ベトナム戦争という戦争自体が「不条理」である他のベトナムものに比べて、アメリカらしい「正義の戦争」をしちゃってるところがダメなんじゃないか、と思う。 兵士も家族も民衆も、誰一人喜ばない戦争、何のために戦ってるのかわからない戦争、それがベトナム戦争が「狂気」を孕んでいる根源だと思うけど、「カジュアリティーズ」の主人公は理想に燃えちゃってるんだよね。 最初から最後まで青臭いくらいの熱血正義漢だから、戦地の他の兵士たちとの違和感がすごい。 とは言え名優ショーン・ペン、ジョン・C・ライリー、ジョン・レグイザモの若々しい姿も観られて、そこは満足。 ベトナム戦争ものの入り口としては入りやすいかもしれない。皮肉にもすごく「カジュアル」な戦争映画なのかもね。
凄惨で不毛な戦争・・・今だからこそ観て欲しい
合衆国史上最大の汚点である「ベトナム戦争」。アメリカ人にとって我々の想像を絶する程のトラウマとなっているこのテーマを扱った映画について感想を述べるのは野暮かなと思いました。が、この映画から伝わるベトナム戦争の狂気は当時の私にも相当ショッキングでした。ウクライナ・ロシア戦争が勃発し一年が経とうとしている今、改めて観てもやはりインパクトが強く考えさせられてしまいました。凄惨で不毛な戦争の虚しさが身近に感じられる今こそこの映画を観て欲しいという思いを込めて、今更ながらレビューさせてもらった次第です。 内容は観てそれぞれで感じ取ってもらうとして、個人的な感想です。私の親愛なるマイケル・J・フォックスがこのシリアスな役柄を見事に演じていることに感動。テレビドラマシリーズに始まりバックトゥザフューチャーに代表されるようにコメディーの第一人者であるにもかかわらず、一切笑いのないこの映画で全くの違和感を感じさず演じ切っている。さらに圧倒的だったのがショーン・ペンの人間の醜さを最低限まで引き出す迫真の演技。というか恐らく演技ではあの迫力だせないでしょうね。何かを超越した人です、この人は。 そして「キャリー」「アンタッチャブル」「ミッションインポッシブル」などの数々のヒット作を送り込んだデ・パルマ監督がアメリカ人の触れて欲しくないタブーを取り扱ったその覚悟に感服。同時期に公開されたベトナムものでトム・クルーズ主演でオリバーストーン監督の「7月4日に生まれて」が大ヒットしてましたが、同じ題材をきれいごととして大衆に訴えかけたこの作品(当時の私にはそう思えた)と対照的だったように思います。 恐らく興行的には大失敗で撮った人、戦争犯罪者の役でイメージを下げた演じた人、見たくないものを見せつけられた観る人の誰一人得しなかった映画ではないかと思います。でも、力強いメッセージを持った「これからも映画ってこうあって欲しいな」と思わせる作品でした。是非。
"192高地虐殺事件"
公開当時、小学生の自分ですらマイケル・J・フォックスが本作の主演に起用された驚きを、今観るとそんな違和感を感じることはなく、事実を描いているとはいえ過剰な演出やエンニオ・モリコーネの音楽ですらデ・パルマの癖がノイズに感じる部分もチラホラと!? 誰も得をしない損するような役柄をショーン・ペンは救いがない程に太々しく演じ切った、デ・パルマは『カリートの道』でもゲス野郎をショーン・ペンに当て嵌める、バカ丸出しでイライラするジョン・C・ライリーの小物っぷりが印象に残り、この二人がテレンス・マリックの『シン・レッド・ライン』で共演しているのは偶然にしても面白く!? 異常な環境による戦争の狂気から連なる事件とは思えない、日常で起こってしまう事柄にも感じられ、日本の足立区綾瀬で起きた"女子高生コンクリート詰め殺人事件"を思い出してしまう、戦争による悲劇だけでは片付けられない人間の愚かさが地球上で起こる惨劇は今も昔も。
ショーン・ペンを観る為の映画
俺は第1回東京国際映画祭で、観ました。 公開当時、「プラトーン」の大成功の影響で、 第二次ベトナム戦争映画ブームが起きていた。 まさかデ・パルマ監督まで、このブームに乗っかるとは思わなかった。 デ・パルマ監督は、こういう反戦映画のような 重いテーマの作品は合わないのではないか? 大御所エンニオ・モリコーネが音楽を担当しているが、 今回はとても大袈裟な感じで、浮いてる感じでしっくりこない。 公開当時、マイケル・J・フォックスがシリアス演技に挑戦すると 話題となったが、やはり完全にショーン・ペンの圧倒的な演技力に、 マイケルのシリアス演技の下手さが浮き彫りとなってしまった結果に。 撮影中、役に徹していたショーン・ペンは、マイケル・J・フォックスと 一言も言葉を交わさなかったという徹底ぶり。 ショーン・ペンの演技力に脱帽!
ベトナム映画の傑作のひとつ
最初の方はなかなか話が進まないので面倒くさい作品かと思いましたが、やがてテーマがはっきりしてきて、アメリカの闇とベトナムの傷を描いた点ではプラトーン、ディアハンター並みの傑作です。 若干説教くさいところはありますが、さすがパルマ選手は、いつものド派手演出は抑えているものの、ベトナムのジャングルのWETな雰囲気を比較的コントラスト高めの色彩感を使って奥行き深い構図でとらえ、主人公の苦悩を明確に呈示しています。
非常時でも理性を。!
一兵士が戦場で体験した非情に辛い出来事をマイケル・J・フォックスが演じるエリクソンを通じて苦しみながらも良心の従って行動する姿が心を打たれる。!
アメリカも良くこの映画を作ったと思う。!
(日本には自ら行った蛮行を描いた同様な映画ありましたっけ!)
強姦されナイフで刺された後でも必死に生きようとする女性を撃ち殺される姿はあまりに衝撃的で涙が止まらなかった。!
(善人面するつもりはないが3日間鬱状態になった)
ショーンペンみたいな奴が今も昔もまたこれからもいるのだろう。!
30年前の話になるが当時で80歳過ぎの老人から兵隊だった時の話を聴かされた事を思い出す。!
中国(満州)従軍時に中国女性を辱しめる事を笑いながら話す姿は常軌を逸しった印象をもったが本人は罪の意識があるようには見えなかった。!
本当ににこのような人が現実居る事に驚かされた。!
人間はどんな状況になっても理性を失ってはならないと決意したい。!
ラストでバスにいたアジア女性から「悪い夢を見たのね!」の言葉はせめてもの救いである。!
このバスにいたアジア女性とベトナムの強姦された女性が同じ役者だとは驚かせる。!
戦闘シーンも割とリアルに作られていると思います。
(ピーバーボートカッコいい。!)
音楽はあの「ニューシネマパラダイス」のエンニオ モルコーネとは恐れ入る。!
最後にマイケル・J・フォックスが演じるエリクソンが言った言葉は今も心に残る。!
「俺達がやっている事は本当に正しいのか?」
「何か大きな間違いをしていないのか?」
※自信がないがこんなセリフと思いました?
揉み消されようとする事実
都合の悪いことを隠ぺいしようとする権力の体質はいつも変わらない。違いがあるとすると、それを告発する人たちをさらに弾圧したり、それでもなお隠し通すのか、事実として黙認するか? この映画は最後なんだろう。 それはさておき、デ・パルマ監督としては脚色の少ないシリアスなドラマだった。コメディータッチの役柄が多いj・フォックスも異色だね。ドラマ「グッド・ワイフ」でもユーモラスな場面もあったが、この映画にはない。監督作品におなじみのショーン・ペンとのやりとりには戦闘以上の火花が散っていた。
BS12字幕版鑑賞。 マイケル・J・フォックスの戦争映画。こんな作...
BS12字幕版鑑賞。 マイケル・J・フォックスの戦争映画。こんな作品があったんだ。彼にはコメディのイメージしかなかった。しかも監督はブライアン・デ・パルマ。 女性を拐い挙句殺害。戦争の中での犯罪、実話のようです。見ているとどうしてそんなことが…というのが如実に理解出来てきます。これはおそらく特異なことではなく、表に現れないものがいくらもあったんだと思います。戦争、生きるか死ぬかの場面、人間は狂気に晒され、まともではいられない。本当に怖ろしい。エンディングでのその後の事実もまた怖ろしい。 本作、興行的には失敗だったようですが、米国民としてはこの負の側面、本能的に認めたくなかったのではないだろうか、そんな気がします。 私的には隠れた名作に認定。でもやっぱりマイケルにはコメディが似合ってる(笑)
当時の不都合な事実
同時代性ある不都合な社会的事実を扱うことは映画を含めた芸術の重要な役割だ。 当時まだ湾岸戦争はなく遅まきながらのベトナム戦争がアメリカの戦争リアリティだった。当時のベトナムリアリズム映画のなかでこの作品は趣を異にしている。青臭さがあるとでもいおうか。それはマイケルJフォックスやショーンペンなどのメインキャストのデフォルメ気味の演技のせいかもしれない。 日本人にはベトナム戦争はリアルとは言い難いものなので一層その共感も反感も難しい。 とはいえ、当時の時代性の中でベトナム戦争の不都合な事実をこれだけのリアリティで作品にした姿勢と成果物には賞賛の眼差しを向けてあげるべきと思う。
迫力あるバトル シーンが良かった
戦争のレイプ問題についての話。迫力あるバトル シーンが良かった。ストーリーも良くできている。しかし、ラストに納得いかない。というか、ラストだけ今までの話とつながっていない。
世の中とはこんなものか?
ベトナム戦争におけるというか、戦時下の兵士の狂気を描いた作品。
最後、事件が軍法会議にまで繋がるのは都合が良いかなあと思った。
あえて、この事件が明るみに出ないくらいが、最もリアルだったかもしれない。
ちなみに、同時にベトナムへ派兵した韓国軍兵士の残酷さはこれの非では無く、そちらこそ映画化不可能だと思う。
全17件を表示