「困難な作業。」インターステラー bashibaさんの映画レビュー(感想・評価)
困難な作業。
気にはなっていたのですが、長尺の作品であることもあって、腰が引け、昨年は見逃していたのですが、キネマ旬報のベストテンにも入っていたこともあり、時間の都合がつく上映館を探して、漸く観てきました。
まず、感じたのは宇宙を描くということは非常に困難な作業であるな、ということです。宇宙開闢のきっかけとなったビッグバンの前には、時間も存在しなかったとのことですが、これは、非常に理解しにくいことです。恐らく、宇宙には3次元よりも高い次元の空間が存在するのでしょう。数学では4次元どころか、n次元空間という概念が頻出するのですが、その空間を可視化するのはやはり困難であります。(この地球上も曲がった3次元空間です。三角形の内角の和は必ずしも180度ではありませんし、二つの点を結ぶ最短距離は線分ではありません)この作品は、2次元平面であるスクリーン上に3次元空間を映し出す映画という表現手段の限界に精一杯の努力をもって挑んだものです。巨大な波が遥か遠方から迫ってくる場面には背筋が寒くなりました。しかし、そういった秀逸な描写がある半面、欠点もあります。父親と娘との絆に関する描写がこの映画のもうひとつの柱ですが、この柱が本作品を通俗なものに貶めています。キューブリックのように徹底した冷徹さに欠けているのです。
泣ける映画ではなく、考えさせる映画にして欲しかった。観終えてからの私の、第一の印象でした。
☆三つにしたのは、宇宙空間を描こうとしたこの監督の果敢な姿勢を評価した結果です。
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