蜩ノ記のレビュー・感想・評価
全93件中、61~80件目を表示
静かな静かな映画です
とても淡々と時が過ぎてゆき、切腹の日が迫ってきます
家族は静かにその日を迎えます
最後まで美しく気高いこの家族に感動しました
その反面、もどかしさも感じます
そして、劇中の美しい日本語、美しい佇まい、美しい立ち居振舞いは、現代日本が忘れてしまった何かを思い出させてくれます
劇場を去る時には背筋がピンと伸びてしまう、そんな日本映画です
静かな映画
最初から最後まで落ち着いている静かな映画でした
でもその中にたくさんのものがつまっていて頭から離れません
映像がとても美しく感動しました
ただただ純粋な気持ちで見られるとても美しい物語でした
日々の生活でふと思い出す、そんな登場人物です
もう一度映画館で見たいと思える映画でした
忍耐という歴史。
なんて美しい日本映画だろう。
とかく日本人は蔑まれて侮辱されて卑下されても耐える。
これほど忍耐に秀でた国民性は世界にないと思うのだが、
それは日本人が受け継いできた歴史に因るところが大きい。
納得のいかない仕事に対しても、難儀を申しつける上司にも、
逆らわず(逆らえず)辛酸を舐めてきた武士や農民がいた。
彼らは決して馬鹿ではないし、臆病者でもない。
反旗を翻して戦うことだけが得策でないのを心得、
時が過ぎ忍耐が報われるまで脈々と歴史を紡いできたのだ。
主人公・戸田秋谷の名文句に、幾つも頷かされる。
人生いろいろと云うけれど、こんな難儀な運命もないだろう、
戸田に課せられた10年後の切腹と家譜の編纂は長い。
冒頭の紹介から彼の人となりが語られ、更に事の真相に話が
及ぶと、これが謀られた処罰であることはすぐに分かる。
だがそれをものともせず、あくまで残り3年後に迫った切腹は
果たすと誓う秋谷。それはなぜなのか。謂れなき罪を着せられ、
ただひたすらとそれに向かう武士の心中が最後に紐解かれて、
ああそうだったのかと至極納得。彼は大殿への忠義を果たした。
だからあの晴れ晴れとした笑顔なのか。あんな笑顔で切腹に赴く
武士など見たことがない。爽やかな終焉に涙が予告なく零れる。
何もかもやり遂げて思い遺すことはない笑顔に何も言えない。
美しい四季に彩られた野山の景色に作物の収穫、い草織りなど、
日々を巡る農民の働きや年貢の取り立てなど、生活に根差した
描写が生きる繁栄を伝え、やっとの家老の決断に真実味を促す。
最後になって聞こえてくる蜩の声が、いつまでも耳に残る。
何をやっても絵になる役所の名演技と、若侍の岡田准一の抑演、
妻も娘も息子も友人も敵方もその佇まいや所作に狂いがない。
派手さは何もないのにどうしてこれほど武士道を感じ入るのか、
黒澤組で小泉監督が培った風情の趣には恐れ入るばかりである。
(もちろんエンディングも一切手抜きなし。これぞ正統派時代劇)
静かな壮絶
理不尽な罪により、10年後の切腹とその間での主家の家譜作成が命じられる。
死ぬことを自分のことにしたいと生きる。この覚悟を淡々と生きる壮絶。慫慂と切腹に向かう男を静かに三つ指をついて送り出す妻の壮絶。覚悟を持って生きるって難しいですね。
割と原作に忠実に映画化されていると思います。
武士ならば弱いものを守りなさい
佇まいの良い作品だなぁ~。監督は小泉堯史氏である。
この人は山本周五郎原作、黒澤明監督の遺稿「雨あがる」を監督した。
僕は原作を読み終えた後、しばらく涙が止まらなかった。
ありふれた「市井の人たち」を映画作品として撮る。
しかし、ありふれたひとたちであっても、人の事を思いやる、弱い人の心に寄り添う。そんな生き方が出来る人は映画を撮る価値がある。
本作を観終わった後、小泉監督が表現したかった事が、自分の腹の奥底の方に、ストンと落ちてゆく。
後味が清々しく、美しい作品である。
どこかの国のエラい人が「美しいニッポン」と言った。
「ゲンパツ」とかいう「ホーシャノー」を垂れ流す「巨大湯沸かし器」は
「コントロールできています」と言いきった。
こういう人たちはきっと、「人の事を思いやる、弱い人の心に寄り添う」よりも「自分の出世を思いやる、そのためには、より強い人に寄り添う」のだろう。
そういう人たちに、この作品を見せてあげたいと思う。
まともな人間なら、きっと自分の生き様に「恥」を感じるだろう。
この映画の主人公のように三年先と言わず、今すぐ
「腹を召されよ!!!」
と厳に申し上げたい。
本作の主人公、戸田秋谷(とだしゅうこく・役所広司)は不祥事を起こし、三年後に切腹する運命を受け入れている。
今は自宅蟄居の身だ。その見張り役として、藩から命を受けたのが岡田准一演じる、壇野庄三郎である。壇野は、戸田の逃亡など、不審な行動がないかを常に監視する。しかし、壇野がそこで見たのは、同じ武士として、戸田が極めて尊敬すべき人物であったことだ。
彼は一つの疑問を抱くのである。
本当にこの戸田が「藩主の側室と一夜を共にした」という、驚嘆すべき大罪を犯した人物なのか?
やがて壇野庄三郎は、藩の根幹を揺るがすような事実を知るのだが………
この作品で特筆すべきは、何よりも美しい絵心だ。端正でしっとりとしている。しかし、決して浮つかず、がっしりとした「絵」をスクリーン上に投影させている。小泉監督は、黒澤明監督によって鍛え上げられた、いわゆる「黒澤組」出身である。本作の絵の美しさは、その黒澤作品を上回るのではないか? とさえ思えるほどだ。
かつて黒澤監督は映画の事を「シャシン」と呼んだ。
映像を、キャメラのレンズを通してフィルムに焼き付けること。その、なんとも手作業の感覚が、大切に大切に、小泉監督に受け継がれている感じがする。
スクリーンに映る、日本の風景。日本の家並み。そしてなにより、質素ではあるが、毎日の暮らしを丁寧に、丁寧に生きていた、江戸時代の「ニッポン人」そして「武士」の姿が印象的だ。
私は決して武士の生き方や、所作を美化しようとか、誉め称えようなどとは、これっぽっちも思わない。
「仏作って魂入れず」と言うたとえがある。
いくら武士として武術が優れようが、その所作が寸分なく完璧であろうが、関係ない。
自分より身分の低いもの、立場的に弱い者。そういった人たちに罪を被せたり、辛い暮らしを負担させたりする者は、すでに武士のココロを失っている。
「美しいニッポン」とか言っているエラい人や、どこかの大都会に「世界の運動会」を呼んだぞ!!と浮かれている人々よ。
武士ならば「弱いものを守ってこそ武士」である事をお忘れなく。
日本人とはかくあるべき
全編静かに流れる如く物語が進行してゆく
日本人の生き様というのがよく表現できていると思います
なかなか現代の日本人にはわかりにくい事柄ではあると思う
こういう映画を世界に発信していく必要が、あるかもしれませんね
テーマが見えない映画
とても悲しい映画でしたが、話に山場が無いし、テーマがはっきりしませんでした。
良い映画なんですが、そういった時代のため、事実を知りながらも悪い家老を殴るぐらいで、あまり感動しませんでした。
それに家老が、お家騒動の張本人のようですが、不思議と人格者でもあり、あまり憎めませんでした。
だから、水戸黄門みたいな勧善懲悪な話じゃないため腰砕けな印象だったし、
自分の名誉より藩の事を優先する立派で、さみしい生き方をした一人の武士がいたのだと思う程度の映画でした。
映画の中に切腹シーンはありませんでしたが、映画の冒頭に切腹シーンを持って来て回想にしたら、もっと良い映画になったと思います。
義を見てせざるは勇なき也
直木賞を受賞した葉室麟の小説の映画化。
10年後に切腹を命じられた武士。その日まで監視を命じられた若き武士。限られた時の中で、日本と日本人の真髄を描く。
清く正しく格調高く。
派手なシーンは無く、淡々とした語り口。
何処までも品行方正で、かえって苦手な方も多いだろうが、自分にとってはドストライク。
秋見るに相応しい日本映画の秀作。
ロケーション、四季の映像、音楽、美術、所作から言葉遣いに至るまで、一つ一つが丁寧で美しい。
小泉堯史監督は、黒澤明からしっかりと時代劇の精神を受け継いだようだ。隅々に、本格時代劇のこだわりを感じる。
良作多い監督作の中でも、ベストに挙げられるだろう。
もはやあれこれ言う必要は無い。役所広司は、出演作品も演技も外れ無し。
岡田准一も引けを取らぬ名演。
歴史好きなだけあって、殺陣も所作も佇まいも見事。
それにしても、時代モノがよく似合う。
間違いなくジャニーズで演技力はピカイチだ。
原田美枝子と堀北真希はそんなに出番は多くない。
出過ぎず、控え目な立ち位置が当時の女性の姿を表している。
ストックホルムシンドローム…という訳ではないが、長く時を共に過ごせば、相手に情が移ってしまうのは必然。相手が高潔な人物なら尚更。
監視を命じられた筈が、切腹させられる真相を探り、救おうと奔走する。
その理由とは、何と理不尽。
理不尽なのは、村で起きたある事件も。
一人の少年が命を落とす。
よく時代劇の世界を古き良きいい時代だと言うが、これは語弊に思う。
藩の不正と隠蔽、百姓の苦しみ…この縦社会の不条理は、現代社会と何ら変わりない。
古き良きなのは、この時代に生きた人々の心にある。
師と仰げる者への礼節と忠義。
子は父を尊敬する。父は子を誇りに思う。
妻は夫を信じる。多くを語らず手を握り、夫婦愛が凝縮されている。
友の為に命を懸ける。
相手を思い、相手の為に何が出来るか。
一日一日死が近付き、目前にしながらも、誇り高く生きる。
義を見てせざるは勇なき也。
人の鑑となれるか。
美しいです〜
原作読んでいないのであの風景や屋敷の造作花ゴザの地域性が合わないんですが多分大分の杵築藩かなぁ 小笠原流の所作が美しいです
丁寧に作られた映画 農民の生活感 祭りなどもこういう時代劇には珍しい
とても美しい映画だった
良かった。久々涙した映画。ストーリー的には特に目新しさもない時代劇にはありがちなストーリーだったと思うけど、映像はとても美しく、静かなそれでいて惹きつける何かがあった気がする。武士とは本来こうあるべき者みたいな。岡田准一の殺陣がとても美しかったし、演じ手の所作のとても美しかったこと。橋を持つ手、筆を持つ手、おじぎをする時の手の動き等細かい所まで丁寧に演じていたのがとても印象的だった。久しぶりに時代劇らしい時代劇を観たなあ。こういう時代劇をまた観たいと思ったわ。
見ごたえあり
2時間を超える長編で見応えがあります。
武士特有の言葉のやり取りが理解できず、ゆったりした雰囲気もあって、前半は眠気との戦いでした。
理不尽な裁きに立ち向かう後半は、おもしろかった。
観た後に、当時の切腹について調べたいと思わせる作品。
役所広司、岡田准一の演技が◎
主役ふたりの演技がすばらしかったです。
テーマは少し重めなのに、たまに少しコミカルな要素を感じました。
ただもっと面白そうとおもってたので、すこし損した気分です。
全93件中、61~80件目を表示