「クロサワの遺伝子。」蜩ノ記 mg599さんの映画レビュー(感想・評価)
クロサワの遺伝子。
小泉堯史監督の新作は腰の落ち着いた時代劇であった。
不義密通のかどで10年後の切腹を命じられたひとりの武士。彼の見張り役として、彼が幽閉された土地に赴く若い侍。
若い侍は武士の家族と接するうちに、また不義密通のからくりを知るに及んで、彼に肩入れするようになる。
他の監督も同じことをしていると思うのだが、人物の配置であるとか、正座する人物の全身を映すショットなどを見ると、黒澤明とそっくりだなと思う。
小泉堯史が黒澤明の弟子筋にあたる、というこちらの先入観も手伝ってのことだと思うが、観ているときは、なんとなく懐かしさをおぼえる。黒澤明の映画は「影武者」以降しかリアルタイムで観ていないが、それでも、本作には黒澤明の遺伝子がみてとれる。
役所広司のたたずまいはただ事ではなく、映画俳優としての矜恃を見た気がした。
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