劇場公開日 2014年10月4日

「これでいいのか、と眉間に一本の皺が寄った気分」蜩ノ記 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5これでいいのか、と眉間に一本の皺が寄った気分

2014年11月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

映像の美しさ、岡田や役所の所作の清々しさ、それはもういい映画です、と言いたいです。
そして、寺島しのぶがいい。「(その人が)この風景と同じ風景をどこかでみているのかと思うだけで心が和むものなのです。それだけで心の支えとなるものです」的な台詞をいう。
ありきたりの台詞が胸に響いてくる。これには参った。

・・・だけど、もうこの設定にどうも納得がいかなくて。
罪人なのに家譜編纂の職を請け負えるものか?、その疑問がずっと引っかかったままで、どうも入り込めない。
編纂をさせるのならば、城内でさせればよかったのでは?
そこになぜ生一本の岡田をさしむけるのか?
まるで頼朝と文覚を野放図にした、平家の手落ちを思い出した。

先日の『石榴坂の仇討』もそうなのだが、現代での常識・モラルを、あの時代に押し付けてくるのもどうも馴染めない。
で、悲しみを秘めた物語なのに、ほぼ悪人が出てこない。ヒール役の家老でさえ実は滅私の人に思えた。だから憎むべき相手がいない。僕の中でその悲しみを慰める発露の先がないのだ。
もしこれが今の時代劇に求められているものだとしたら、僕は間違いだと思う。
藤沢周平的なものを好む人が多いのは知っている。でも僕は池波正太郎的な人間の泥臭さのほうが好きなのだ。

今読みかけの原作も、たぶんもう開くことはないだろう。

栗太郎