「慟哭、呆然、涙。」ベルリンファイル K_sumioさんの映画レビュー(感想・評価)
慟哭、呆然、涙。
この映画を見る動機になったのは、女優「チョン・ジヒョン」に興味を持ったからである。彼女、先日見た「10人の泥棒たち」に出演。その後、結婚を経て、この「ベルリンファイル」に出演したから・・・という単純な理由から始まった。
自分がシアターで見た「ベルリンファイル」感想を書いてみたい。
妻である、リョン・ジョンヒ(チョン・ジヒョン)の身になってみれば、夫は、北朝鮮で最優秀スパイであるが、その仕事に埋没し家庭をかえりみない現実が、一人目の息子を餓死させてしまった。そして、自分は、ベルリンの北朝鮮大使館の通訳という職責だが、実は、スパイとして交渉国の「性の接待」もする悲しい役目をするのだ。
それを、知っているのか知らないのかわからない夫婦生活をベルリンで営みながら、二人目の子供を妊娠する。しかし、北朝鮮の特権階級、すなわち軍参謀とその息子の、巧妙に仕組まれた逆スパイの嫌疑をかけられ「逃亡者」とならざるを得なくなる、ギリギリまで夫婦は追い詰められ、妻は、捕らわれの身になるのだ。彼女を、奪還すべく、単身アジトへ乗り込んだのだが・・・。
そこに、ハン・ソッキュ演じる韓国の情報員の力を借りなければ、奪還できないどん詰まりの状況に追い込まれる。ハン・ソッキュの演技も秀逸だが、主人公のハ・ジョンウの怒りに燃えた敵とのハードアクションは見応えがありすぎだ。
そして、妻を奪還するのだが、悲劇的な結末を迎えることになる。何故、彼女が死んでいかなくてはならないのか? そこに、この映画の非情なストーリーが描きだされている。
まさに「スパイ・スパイアクション映画」の核の部分が描き出されている秀逸な映画である。でも、まだ見ぬ子供と一緒に死んでいった妻を泣きながら抱きかかえ、一面枯れた葦の中、既に冷たくなった彼女を背負いながら、それでも死んだ事実を信じられず疾走して行く主人公、その女性が北朝鮮のスパイであるが、まさか、ゴーストの妻とは、知らなかったハン・ソッキュの呆然とした目、チョン・ジヒョンが、悲しくも美しい妻だからこそ、最後の結末に観客の皆さんも涙することと思うのだが・・・・。