「愚かで正直なプリンセス。」ダイアナ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
愚かで正直なプリンセス。
まったくの失礼を承知で申し上げるなら、
ダイアナってどこまで愚かで正直な女性だったのだろうと思う。
そこが一般市民から絶大な人気を得た親しみやすいプリンセス、
英国王室の印象を変えたとまで言われた所以なのだろうが、
彼女の性格(幼い頃からの家族関係)が災いしてか、一時も
平穏な安らぎを心に得られなかったんじゃないかというくらい、
彼女の表情も行動も、痛くて見ていられないシーンが多いのだ。
あの性格と大胆な行動に走らせる愚直さまでを受け止められる、
寛大な心を持ち合せる男性が現れてダイアナを救っていたなら…
などと、もはやあり得ないことまで祈ってしまった。
彼女が想い描く恋愛は立場を除きさえすれば成就しただろうか。
ハスナット医師との二年間に絞られて描かれたラブストーリーは
観る人によって様々な感情を抱かせる。
よくこんな真実を、わざわざ今になって描き出したと思うが
だからといって、20歳で王室へ嫁ぎ、王子を二人産んだ元妃への
愛情や尊厳が失われていいことにはならない。
彼女の行動を見ていると、注目を浴びること=愛されている確信が
顕著な反面、自分以外に関心が向くのを極端に恐れては傷つけると
いうことが多く、別れた相手への執着が強い。幼い頃の両親の離婚、
自身の結婚の失敗、誰も自分を愛してくれない・傍にいてくれないと、
そればかりに苦しめられては孤独感を募らせていく、という悪循環。
国民的スターが私生活も円満至極、とはあまり聞いたことがないが
これがドンと構えた性格の持ち主(あっちの夫人じゃないですが)なら、
「何が不倫だ、私は王妃よ」みたいなふてぶてしさが醸し出せたのに…
なんて(それだとおそらく人気は出ないだろうけど)、思ってしまう。
パパラッチへの対応でもあまりの酷さにブチ切れたかと思えば、
恋人の気持ちを試すために逆利用してみたりと、いかに情緒不安定
だったかが見てとれる。可哀想で仕方がないけれど、それは自身が
招いてる結果なんだよな…が見てとれるのだ。
今、彼女が存命だったら、どんな人生を歩んでいたかと想像する。
息子である王子が結婚、孫ができて、実母として喜びの境地だろう。
きっと未だあの美貌と人気は衰えず、追い回され、それでもどこか
安らぎを得られる新境地を、自身で見つけ出していたかもしれない。
そうであって欲しいとどこかで願っている。
N・ワッツもハスナットを演じた俳優も大健闘な分、虚しさが残る。
(36歳は早過ぎた。もっとたくさんの感動と経験が味わえたはずなのに)