「気色悪い」私の男 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
気色悪い
時間をさかのぼる手法の原作と違い、順に、花が大人へと進んでいく。
同じような境遇の、実の父と子。
凛々しい青年が自堕落な初老の腑抜けへと変わり、素直そうな少女が妖艶な大人の女へと変わる。
まあ、他人からはそう見える。
実はおぞましいことに、はじめっからふたりの体の中には、獣が棲んでいるだ。
娘をひとりの人格と認識できない父は、自慰行為に耽るように娘を求め、たいして娘は、父の精魂を吸い取って成長してしまったようだ。
とにかくエグイ。演技も、絡みも、演出も、映像も。
この監督、『夏の終り』のときほどではないが、原作未読の観客を、平気で置いてきぼりにする印象が強い。かといって、食い入るように引っ張られたかっていうとさにあらず、ダレるように感じてジレることもある。
言葉ですべてを説明するのも野暮の極みだが、わかるやつだけ付いて来いっていうのもいただけない。
万人受けしない、というが、つまり僕はその受けないほうだ。しかも、嫌悪感さえもって。
淳悟の気持ち?花の気持ち?
わかるわけがない。
このふたりが身近にいたら許せる?自分もこうなりたいと思う?
思えない。だってただの鬼畜だから。
むしろ、大塩のおじさんや小町の気持ちこそよくわかる。
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