「カテゴライズできない私」ダイバージェント 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
カテゴライズできない私
原作はアメリカのヤングアダルト小説。
人類を『勇敢』『無欲』『博学』『平和』『高潔』の
5つのファクション(共同体)に分けて社会を構築する
近未来世界で、その5つのどれにも当てはまらない
危険因子=ダイバージェント(異端者)と
判定された主人公の戦いを描くSFアクション作。
.
.
.
『自分は何者なのか』とか『他者(社会や血縁)の望む
自分と自分の望む自分とのギャップ』みたいなテーマは
ティーンエイジャーになれば誰でも思い悩むテーマ
(まあティーンエイジャーに限った話でも無いケド)。
この物語の世界観もそんなテーマを表すための
手段なのだろう。そういう点で言うと、同じく
アメリカのティーンに人気の『ハンガーゲーム』よりも
“屋台骨” はガッシリしている気がするし、ストーリーの
展開も個人的にはこちらの方が凝っていると感じた。
.
.
.
というわけで必然的にストーリーは『人を束縛する
システムVS主人公』という流れに傾いていくワケだが、
続編ありきの映画なので今回はそこはかなり薄め。
本作では血筋に反して『勇敢』に入団した主人公が
訓練を通して成長していく過程がかなりのウェイト
を占めて語られる。
なので、大がかりなSFアクションを期待している方は
この辺りで肩透かしを食らうと思うのでご注意を。
.
.
.
とまあ、アクション面では物足りないが、
ティーンの成長ドラマとしては堅実な出来。
主人公ベアトリスはスーパーヒロインじゃない。
“ダイバージェント”は特異な気質ではあっても
人間離れしたパワーが使えるワケじゃないので、
ベアトリスは心も力もフツーの少女だ。
これが本作の特徴で、ベアトリスは
最初の内はまるっきり落ちこぼれなのである。
そんな彼女が仲間や恋人を通して自分なりの強みを
発見し、力強く成長していく姿。そこに共感する。
観ているこちらも応援したくなってくる。
演じるシャイリーン・ウッドリー。流石に名女優
(と言ってしまおうと思う)ジェニファー・
ローレンスほどの力強さはないが、
フツウっぽくも気骨のありそうな雰囲気は○。
また、彼女を精神的に支える教官フォーが、
不器用だが思いやりのある男でカッコいい。
演じるテオ・ジェームズはこれから続々出演作が
公開される注目株らしい。
あとスパルタ教官を演じたジェイ・コートニー。
こいつが憎たらしい男でしてねホント。ちなみに
『ターミネーター』リブートでカイルを演じるのは
彼だそうです。え、いや、ターミネーターじゃなくて。
.
.
.
と褒めた所で(笑)、本作で一番不満だった点を挙げる。
簡潔に言うと、『なんでこの社会システムで
今まで上手くいってたのか?』に納得いかない。
そもそも『なんで終末戦争後にこのシステムを
採用しようとしたのか』も理解しがたい。
ひとつのファクションが力を付けすぎないよう
監視しているという設定なら納得できたかもだが、
この映画だと政治は『博学』が支配しているようにしか
見えないし、『勇敢』は『博学』にいいように
使われてるだけのならず者集団に見えちゃう。
詳細がほとんど語られずに終わるファクションも
あるしね(まあ続編で登場するのかもだが)。
あと、“ダイバージェント”たちがどうしてそこまで
恐れられるのかもイマイチ伝わらなかったかなあ。
過去に“ダイバージェント”による事件があった
という設定ならこれまた納得できるんだけど。
『運命を5つの種類に制限する社会』というのは
テーマを表す上では面白い世界観なんだけど、
物語としては色々と違和感を覚えてしまった訳で。
.
.
.
と、世界観に違和感を覚えつつも、ティーンの心象を
表現するための手段だと思えば多少は納得できるかな。
運命を束縛するシステムへの反抗心。
自分の運命を握るのは自分自身だという強い意志。
映像的には『ハンガーゲーム』より派手さは抑え目。
そのぶん主人公の成長ドラマがもう少し詳細。
続編に期待ということで、まあまあの3.0判定で。
〈2014.07.15鑑賞〉