劇場公開日 2013年4月13日

「原作への大きな理解と愛情が伝わった」HK 変態仮面 Kasanmaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5原作への大きな理解と愛情が伝わった

2013年4月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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興奮

鉄腕アトムの昔から,ヒーローは悲しみを背負って戦う(アトムは製作者に捨てられた)。
しかし,ヒーローの悲しみは多くの場合,ヒーローになる経緯(仮面ライダー)や,世間の誤解(バットマン)である。
変態仮面が既存のヒーローと一線を画すのは,ヒーローとしての活動それ自体が反社会的性格を持つことだ。
故に主人公は,己が変態であることを認めず,変身に言い訳を必要とする。主人公が,自分がヒーローその人であると言い出せない理由にこれほどまでに説得力がある作品が他にあっただろうか。
したがって,ここでは正義と道徳が緊張関係に立つことになるのである。

原作はその悲しみを喜劇に昇華していたが,変態性との葛藤は変態仮面という作品の重要なテーマである。
そして,この実写映画はそこを見事に捉え,描ききってみせた。
本作がダークナイトと並び立つとまで言われるのはそのためである。

しかるところ,変態性を描くには変態仮面の容姿が極めて重要である。
主演の鈴木亮平は実写化にあたり見事な肉体を作り上げた。のみならず,一挙手一投足の指先に至るまで,変態的美学の通ったポージングを貫いている。
漫画的な変態が生身の肉体で完全に再現されたことで,変態仮面はさらなる変態的印象力を獲得した。見事というほか無い。

脚本も概ねテンポ良く,予測可能な展開やセリフ回しもドリフのコントのように心地よい。
格闘アクションが変態技以外の部分で練度が低いことと,最終決戦で低予算映画の限界が顕になっているので満点とはいえないが,これほどに痛快な映画はなかなか無い。

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Kasanma