「紛う事なき傑作、言葉はいらない」ザ・レイド GOKUDO no_nameさんの映画レビュー(感想・評価)
紛う事なき傑作、言葉はいらない
最初に一言でこの作品を説明するなら
”ビチグソみたいな邦題をつけたやつをぶちのめしたくなるぐらいにアクション、脚本、音、映像が高水準でまとめられた超A級神映画”。
ただ注意すべき点として、本作は前作のような”嵐のような怒涛のアクションシーンの連打”といったものでなく、人間たちのドラマにも注力しながら一つの血みどろの抗争を描ききった映画(全然違うとは思うんだけど”ヒート”や”ダークナイト”のような感じ)で、しかも結構説明なしに淡々と話が進んでいくので初見では「何でそうなるの?」といったところがいくつかでてくること請け合い。なので、一発でスカッと理解したい方はネットである程度人物背景をまとめておいた方が良いかもしれない。そう聞くと「え~まじかよ、めんどくせ(怠)」と思う人がいるかもしれないけど安心してほしい。予備知識なしでも大筋は理解できるし、複数回見るに耐える内容で、かつ複数回見たくなるから。
褒める(上から目線で申し訳ないです)点が多すぎて何から話せばいいかわからないけど、まずはやっぱりアクションシーンかなぁと。主役のみならず、味方や敵の皆の動きがキレッキレで見てるだけで楽しいのに、戦うシチュエーション(刑務所のトイレで数十人相手に個室で迎撃、タクシーに乗ったところを数十人に囲まれてまるでゾンビ映画のようにナイフを持った手が襲いかかる)や、敵役のキャラ(ハンマーガールに野球少年)がユニークで面白い。また、スローモーションを殆ど使わず、スピーディなアクションが展開していく中で主人公も敵もどんどん傷ついていく様子が非常にスリリングで引き込まれる。
脚本もすごい。主人公が潜入捜査を開始するところから、抗争が始まって終結するまでの経過をアクションシーンを交えて見せつつ、その中心にいる人物たちの背景や心の動きを適度に描き、それがクライマックスに繋がっていき感動を生む神脚本。養育費支払うために人を殺す親父にまつわるクダリは最初は「無駄じゃね?必要ないだろ」と思ったが、その数分後に納得。実はこの親父、前作のめちゃめちゃ強いラスボス役の人が演じてるんだよね。どれくらい強いかっていうと主人公が兄貴とタッグで戦ってギリギリで勝てるくらい(二対一じゃないと勝てない)。で、その親父が本作では本作のラスボスに瞬殺。いくら前作と別の役とは言えこの絶望感。ちなみに主人公は一人でこのラスボスに挑む事になる。本作ではこんな少年漫画的展開も味わえちゃいます。
次に音。グチャ、ペリッといった生々しい音が絶えず流れて耳の中がハッピーになる(でも映像自体は割とグロくないからグロ苦手って人も割と本作はいけるかも)。BGMもアウトレイジやドライブを想起させ、映画の雰囲気を損なうことなく支えていてグッド。
映像。ほんとに良い。刑務所のグランドで泥まみれになりながら警官と囚人が殺し合う様子を俯瞰で撮影するところとか見て「わかってんじゃん!」と叫んでしまった。あとスローモーションの使い方も素敵。アクションシーンでは殆ど使わず、刑務所のグランドで主人公がこれから自分が襲われることに気付いたり、主人公が潜入捜査で消耗した精神を癒すため家族に電話をかけるシーンだったり、そういう”画面の人物の心情が揺さぶられるシーン”の表現にスローモーションを使っていて、それがみてるこっちにもその時の感情が伝わる作りですごい良かった。某ルパンはこれを見習えよ。
いろいろ言ったけど正直本作に言葉はいらなくて
”見れば分かる”
そんな素晴らしい映画だった。