「大ベストセラー詩集の誕生秘話には更なる感動が有ったなんて信じられる?」くじけないで Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
大ベストセラー詩集の誕生秘話には更なる感動が有ったなんて信じられる?
私はこの映画を完成披露試写会で観た訳ではないので、当然試写会場に監督や出演者が来ていたわけではないが、映画終了後、試写会場では拍手の嵐が起きた。
本作は2時間8分の長尺映画だ。かなり集中力を要する作品なのかもしれない。
一緒に観た友人の口からは、少し長かったと言う言葉が漏れた。
しかし、私は初めから最後迄、よく笑い、よく泣いて、存分にこの作品を楽しむ事が出来たのだ。
認知症を患ったご主人を見送り、その後ご自身も緑内障の手術を受けたヒロインの柴田トヨさん。
術後一時的に、長年連れ添ったご主人を亡くされた心労と環境の変化に加えて、手術に因る体調の変化も重なり、認知症を併発しそうになる。
そんな母の様子を心配した、一人息子の健一さんが元気を取り戻す手段として、トヨさんに詩作の提案をすると、トヨさんもこれを受け入れ、以来トヨさんの新しい生活が始まる。
そして数年の後、健一の妻静子さんの提案で、トヨさんの詩集が自費出版される迄の過程と共に、トヨさんの幼少期から、今日までの、その生涯が丁寧に本作では描かれていく。
私も50代になり、体調の衰えが出て、公私共に心労が重なって来た頃、ふとした事から、書店で手にした、柴田さんの詩集「くじけないで」に、励まされた一人だった。
その詩集からは、映画で知った彼女の生涯を感じさせない、明るく、前向きな作品が綴られていて、詩集から元気を沢山もらった記憶がある。
そんな彼女の前向きな、明るい性格の詩集だからこそ、異例の大ベストセラー記録を創り上げる詩集となったのでしょう。
きっと日本には大勢の愛読者方がいらっしゃると思う。
その詩集の中からは、息子の健一さんが、今で言うフリーターの走で一人息子の健一さんの事で御苦労をされていたとは、想像も出来なかった。
リリーフランキーの「東京タワー」を観た時の様に、本作も初めから最後まで、笑いと共によく泣かされた映画だった。「東京タワー」以上に観ていて、号泣してしまった。
そんなトヨさんの波乱万丈の人生を清々しく演じていたのは、何歳になっても、少女のような素晴らしい魅力を残している大ベテランの八千草薫。それに加えて、放蕩息子と言っては申しわけないが、健一を武田鉄矢が面白味たっぷりに演じていた。そして、妻静子を伊藤蘭が絶妙な掛け合いの芝居を展開していた。
平凡な生活でも日々感謝と共に、一瞬一瞬を大切に、丁寧に生きている事の素晴らしさを本作も、詩編同様に教えてくれる。ご家族揃って観ても楽しめる今年一番のお薦め作品でした。