「あんまりな偶然。」抱きしめたい 真実の物語 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
あんまりな偶然。
ドキュメンタリーを基に映画化された作品。
観るまでは記憶障害がメインの話だと思っていたが、
主人公二人のラブストーリーがメインになっている。
主人公である雅己(錦戸)が、つかさ(北川)を彼女にするまで、
その後、自身の親と相手の親の了承を得て結婚に至るまで、
さらにつかさが妊娠して出産に至るまで、ほぼ雅己のペース。
不運な事故で半身麻痺と記憶障害が残るつかさを好きになり、
当時付き合っていた彼女をふっての決断というところが凄い。
リハビリのシーンは非常にリアルで北川の演技がかなり壮絶。
ご家族がどれほど大変な時期を乗り越えてきたのか伝わるが、
このビデオシーンはそれまでの流れからすると、かなり唐突。
(このシーンだけがドキュメンタリーらしいつくり)
リハビリを経てやっと普通の生活ができるようになった娘が、
今度は見も知らぬ男と結婚するだなんて!?という母親の
驚きは分からなくもないが、いきなりのビンタ☆には驚いた。
妊娠を知った時のビンタ☆も然り。どれほど心配かという
母親の気持ちも確かに分かるが、雅己も負けてないから立派。
この雅己という人は、若干意地になってるんじゃないか?と
思えるようなところもあるが、やはり自分の愛する人を幸せに
したいという強固な意志がある。つかささんは幸せだったと思う。
大事故に遭ったり生死の境を彷徨っても生還する人というのは、
何かこの世で役割を果たすために生かされた人だと思う。
生かされた人を支える人もまた、何かしらの使命を帯びている。
出逢うべくして出逢った二人で、結ばれるべくして結ばれた二人。
それならどうしてもっと長く、生活を続けさせてくれないのか。
「私、神様に蹴とばされたんだなーって思ったんだ。」といった
つかさの言葉を思い出し、あんまりじゃないか!と思ってしまう。
運命は何度でも同じ人を襲うのだろうか。あんなに苦しんでなお、
生きようと頑張っている人にまで…これが偶然なんて残酷すぎる。
後半の子供同士のやりとりは微笑ましかったが、
おそらく実在する人々を登場させようとするあまり?に演出の
不自然さが際立っていた。役の立ち位置が今ひとつ伝わらない。
ドラマかドキュメンタリーか、の曖昧さが没個性を生んでいる。
(つかささんの役割は、愛し愛されることだったのかもしれないな)