テルマエ・ロマエII : インタビュー
阿部寛&上戸彩のみなぎる自信 日本中を再び爆笑の渦に
笑いは数倍増し、“裸度”も各段にアップ。「テルマエ・ロマエII」は、難しいといわれる続編のハードルを軽々とクリアした。主演の阿部寛、ヒロインの上戸彩とも出来には満足げで、言葉のひとつひとつに自信がみなぎる。新たな適役を得て迷いなく突き進んだ阿部と、その阿部を指針に女優として映画との距離を近づけた上戸。2人を中心に古代ローマ人と平たい顔族が奏でる勘違いのスペクタクルは、日本中を再び爆笑の渦に巻き込む可能性大だ。(取材・文/鈴木元、写真/江藤海彦)
阿部「笑いましたねえ。自分のやったところは大体分かっていたけれど、それでもけっこう面白かった。後は自分の出ていないところ。彩ちゃんだったり、(武内英樹)監督が一番好きな奴隷の勘違いだったり。面白く作っているなと思いました」
上戸「映像もそうですけれど、音の使い方だったり編集でより面白くなりますよね。武内さんはすごいなあと思うし、やっぱりルシウスの“顔芸”が…生で見ていても面白いけれど、映像で見るとより面白い。ひとつひとつがツボでした」
2012年「テルマエ・ロマエ」は興収59億8000万円のメガヒット。原作も累計900万部を超える人気コミックだけに、パート2への流れは当然といえる。2人とも迷いなく受け入れたが、阿部には奇をてらったものにはしたくないという思いもあった。
「中途半端なことはやっちゃいけないと思いましたね。2で欲張って良くなくなる作品は海外にもあるじゃないですか。そこは注意しました。まだまだ面白いネタはたくさんあるだろうし、それでコミカル度や笑いどころをバンバン増やして作ったら面白いんじゃないかって。脚本もそうできていたから、これは面白いと」
一方の上戸は、再びラテン語のセリフという試練はあったものの、喜びを素直に表現する。
「1作目の大ヒットがうれしかったし、求められている続編という感じがすごく伝わってきた。うれしい気持ちと胸を張れる部分があって、前向きに撮影することができたので毎日が楽しかった」
斬新なテルマエ(公衆浴場)で地位を築いた設計技師のルシウスが、グラディエイター用のテルマエ建設を命じられ、悩んだ揚げ句、再び現代の日本へ。そこで風呂専門誌のライターに転身した真実ら平たい顔族と再会するが、古代ローマでは平和推進派と武力行使派との対立が激化していた。
おなじみとなったCGによるタイムスリップのシーン。時代の変遷は明確にされていないが、パート1ではただ水の流れに翻ろうされていたルシウスが、今回は平泳ぎや背泳ぎのフォームを取り入れ成長(慣れ?)している印象を受けた。
阿部「そんなの、入れていましたっけ?」
上戸「あ~、っぽいのありましたね」
阿部「どのくらい時間がたっているか分からないですよね。しかも、真実に再会した時に『おい、真実!』って言うのかと思ったら、監督が『いや、ここはまた奴隷扱いでお願いします』って(笑)。だからこれは1回、コメディ面でニュートラルに戻さないといけないなと。同じことを繰り返して、それをスケールアップさせてやっていけばいいということは考えていました」
スケールという面では、ブルガリアの首都ソフィアにあるヌ・ボヤナ・フィルム・スタジオにコロッセオをはじめとする巨大オープンセットを建設。約1カ月のロケが行われ、現地エキストラの延べ人数も前作の5倍となる約5000人に上った。
阿部「スタジオの中にもあれだけ大きなセットがなかったから、それを見ただけで面白かったと思うんですよね。しかもお風呂の話なので、物珍しいじゃないですか。だから皆さん、すごく協力的で楽しんでやってくださいましたね」
しかし、体格のいいブルガリア人に交じると阿部でさえ小さく見えることも。体重が落ちやすい体質でもあり、キープするために1日5食の日々だったという。そんな肉体美は存分に披露され、裸でいる割合も確実に上がっている。
上戸「常に裸でしたもんね。お尻は見どころですよねえ」
阿部「アップみたいになっていましたからねえ」
上戸「サービスカットです」
一方、日本での撮影は名湯・草津が中心だったが、阿部がウオータースライダーを滑るシーンは爆笑もので大きな見せ場だ。ここで、上戸が撮影秘話を明かす。
阿部「僕も年をとったのかなあ。最初は怖くて、しがみつきながらやっていたんですよ。僕のサイズでは飛び出しちゃうんじゃないかっていうのもあって。だんだん慣れて怖くないと分かると、ちょっとオイルを塗るといったどんどん滑る仕掛けもして」
上戸「アップって阿部さんが自分でカメラを持って撮影しているんですよ。あれは分かって見ていても面白かった」
阿部「最初はカメラを(体に)縛りつけていたんだけれど、やっぱりぶれるわけです。自分で撮る方がやりやすいので、(カメラを持って自分に向けるポーズをして)アアアーッて。ちゃんと計算してやったから、ぴったり全部入っていた」
実に楽しそうに撮影を振り返る阿部を、頼もしそうに見つめる上戸の瞳がキラキラ輝く。そもそも前作への出演も、当時で10年ぶりの共演となった阿部の存在が背中を押してくれたという。それを機に映画との距離を縮め、昨年は「おしん」、「武士の献立」に出演するなど積極的な姿勢が際立つ。
「私にとって映画はランクが上のところにあって、届かぬお仕事という気がしていたんです。でも、主演として阿部さんがいらして、そこに甘えられる機会というのは、自分にとってもありがたいこと。ひとつの映画に挑戦するという思いもありましたけれど、作品として阿部さんと一緒にやりたいって思ったんです。それで映画の楽しさ、素晴らしさを知ったし、ひとつの台本を何回も繰り返し読むことができ、役と向き合う時間がたっぷりある。そういう魅力を知れたおかげで、映画が怖くなくなったんです」
恥じらいながらも、しっかりと自己主張する姿に阿部も目を細める。
「真実は、1で脚本を読んだ時に僕でも心配になるくらい難しい役だと思った。それでもすごく頑張ってね。彩ちゃんだからある存在の優しさやコミカルさ、その中にちょっとホワッとしたものがあったり、そのひとつひとつがものすごく魅力になっていた。今回も入浴シーンがあって大変だよなって思ったけれど、すごく色っぽく見せて真実の違う面がそこにも凝縮されて、あらゆるシーンで輝いている。あらためて尊敬に値しますね」
すると上戸は、テーブルに置かれたボイスレコーダーに手をのばし「これ、どれかもらってもいいですか?」と照れる。そして、「うれしいです」とポツリ。敬愛する阿部からの最大級の賛辞に喜びを隠し切れないようだ。
そんな深いきずなを感じさせる2人は、作品の出来には十分な手応えを得ている。
阿部「とにかく本当に笑いどころが増えている。脚本が良かったし、皆、迷いなくやれているのでキレもいい。楽しんでもらえるエンタテインメントができた」
上戸「誰もがこの世界観に入ってこられるというのは1で確信できたので、2も本当に楽しみでしかない。不安や裏切りは全然ないでき上がりになっていると思う」
今年2月のブルーリボン賞授賞式、司会を務めた阿部は、「僕も顔が濃い方なんで」という主演男優賞の高良健吾を「われわれの部族に入りますか?」と“スカウト”していた。早くもシリーズ第3作への布石か!? いやいや、これは阿部流のリップサービスで「いやあ、もうないでしょう」と苦笑いする。そんな夢は先に取っておくとして、まずは「テルマエ・ロマエII」で笑いの神髄を堪能していただきたい。