「特別2時間ドラマスペシャルで放送したら、高視聴率獲得出来るかもな~?」二流小説家 シリアリスト Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
特別2時間ドラマスペシャルで放送したら、高視聴率獲得出来るかもな~?
物語全体から感じられる作品の香りは、やはり翻訳ものミステリーの匂いが出ていた。
この作品の監督、猪崎宣昭氏は、日活で腕を磨いた斎藤光正に師事していたと言う。そしてその斎藤光正は今村昌平に師事していた。その今村昌平は誰の下で働いていたの?と言えば、邦画界の神様、小津安二郎の助監督を務めていた人である。4代も先になると、残念だけれども、本編であっても、そのテイストは2時間ドラマのテイストになってしまうのだろうか?
それとも、猪崎宣昭監督はTVでの現場がもう長過ぎて、画作りがTV様になってしまったのだろうか?
私は、TVが面白くないので、もう20年程ろくに見ていない。だが、子供時代は、TVを未だ沢山見ていた。その頃の思い出の作品の殆んどが、斎藤光正監督の作品であった。
斎藤監督も本編を監督しているが、晩年はTVが多数を占めていたので、その関係で、やはり猪崎宣昭監督も、初期の頃は本編の助監督もしているが、その後の仕事の殆んどが、TVの監督作品が大多数を占めている。
確かに、猪崎宣昭監督と言えば多数の時代劇から、2時間ドラマを手掛ける、TV界の大御所監督だと言う事は歴然としている。だからこそ、この作品は敢えて、映画館で掛けなくても、TVの特別2時間ドラマスペシャルで良かったのではないかな?
この作品をもしTVで放映していたら、きっと高視聴率が取れたに違いない。凄く残念だ。
話は少し横に飛ぶが、最近評判の「奇跡のリンゴ」でも「私達はどうして、こんなに貧乏しているのに!」と無農薬リンゴ栽培を諦めかけていた父親に、詰め寄る娘が何故か、可愛いオベベを着ているし、キルティングの超可愛らしいトートバックを学校に持って通っていたのが、日本映画界のリアルの無さで、呆れ果てるが、この本作も本篇であるならば、もっとリアルを追求して貰いたかった。
猪崎監督は呉井を演じる武田真治の芝居がよほど信じられないのか、それとも彼の心理状態を描き出すのに、異なる衣装を着せかえる事で、彼のエキセントリックなその時々の心理感覚を出そうと冒険を試みたのだろうか?
木下恵介監督も様々に冒険的、実験的映画を創作しているので、何も実験的映画が悪いとは言わないけれども、本作の呉井を描く場合はもっと別の演出力で、呉井を見せて欲しかった。呉井の本心、この完全なる異常者とも言える、呉井の核心に迫る心理を映画なのだから、焙り出してほしかったのだ。
原作を通読していない私には偉そうな事を言う資格は無いのかも知れないが、原作的にはそんな犯罪者達の、微妙な心理が巧く描かれていたのではあるまいか?
さもなければ、ミステリー大賞などに選出される作品と成り得る訳が無い。ましてや、駄作なら、日本と言う海外で翻訳出版される筈も無い。
2時間ドラマなら、最高の顔ぶれだ。上川隆也を折角出演させているのだから、もっと丁寧に彼の心理状態も対比させて描いたら、最高に面白かったはずなので残念でならないな~