カレ・ブランのレビュー・感想・評価
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ディストピアに見る現実
極端に色味の抑えられた画調と映し出されるミニマルで無機質な街の光景を観ていると体感温度がぐっと低くなったような感覚がする。 ディストピアを描いた小説や映画に接する時、何処かで「所詮これは現実にはあり得ない世界」だと高を括っているものだが、これはそんな風に、今私達が生きているこの世界や社会と単純に切り離して観る事が出来なかった。 それが本当に空恐ろしい。 「社畜」となったフィリップが、強者(社畜)と弱者(家畜)に振り分ける為にやらせるゲームは、理不尽なパワハラや下請けいじめを思わせるし、強者が弱者を搾取する構図は現代社会と変わらない。 「社畜」と「家畜」という分類は、デフォルメした「格差社会」に他ならない。 そんな社会はおかしい! と誰も声をあげずに漫然と受けいれれば、「家畜」になる日も近いかもしれない。 「“怪物”は見えているか?」 そう問いかけられている気がした。
「当たり前」の狂気具合。
「社畜」と「家畜」についてのセリフ的説明はほとんどない。 淡々と繋げられている薄暗い、人の気配が希薄な連続写真の中にストーリーはあり、必要最低限のセリフで構成されている。 そんな世界のなか、ふと「これは実写?」と思うほどの街、建物がストーリーの冷たさ、暗さを更に際立たせていきます。 監督は「ラブストーリー」という。 ソレは確かに、映画の中の最重要な部分として提示されています。 ソレとは別に、このラブストーリーと共にある「当たり前の世界」がどれだけ狂ってるか。 そしてそれを狂っていると思う見てる側も、無意識のうちにそちら側に向かっていってしまってるのではないか。 いい意味で七〇年台、八〇年台の映画の感じ。 様々なその次代のSF作品(ディストピア)の影響を感じられます。
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