「本来ならば、日本が作らなければいけない」終戦のエンペラー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
本来ならば、日本が作らなければいけない
第二次大戦直後、GHQ統治下の日本を舞台に、実在の米将校が昭和天皇の戦争責任を調査する姿を描いた歴史ドラマ。
ハリウッドでも、ここまでがっつりGHQ統治下の日本にスポットを当てた映画は初めてだとか。まあハリウッドからすれば、一つの歴史の裏側程度だろうが、日本人からすれば、興味津々。知ってるようで知らない歴史の裏側。その時何があり、日本は再出発したのか…?
日本人プロデューサーが関わっており(物語に絡む夏八木勲演じる宮内次官・関屋貞三郎の孫)、時代考証・日本描写に違和感は無い。それこそ、「ウルヴァリン:SAMURAI」「47RONIN」とは雲泥の差。史実なのだから正確で当たり前なのだけど、まず好感を持った。
内容も、お堅い歴史の話をサスペンスタッチで描いており、なかなか楽しめる。
天皇の戦争責任に迫る。ハリウッドだから作れたのであって、日本では到底無理だろう。
日本は映画で天皇を描く事はタブーとされている。が、タブーなだけであって、禁止されている訳ではない。アレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」もそうだが、本来ならば、日本が作らなければいけない映画だと常々思っている。
本作も、何も天皇を侮辱したり、罰そうとする内容ではない。天皇の描かれ方も、戦争の責任は全て自分一人にあると進言し、日本の将来を案じ、マッカーサーとの会見を受け入れる、良識ある人物として描かれていた。現人神にあらず、平和人ヒロヒト。
確かにデリケートな題材だが、日本映画が、真っ正面から取り組まなければいけない。
日本で終戦映画を作ると、敗戦の焼け野原から立ち上がる庶民の姿がほとんどで、米軍もパンパン(死語)と遊ぶだけのあまりいい印象で描かれない事が多い。
勿論、それは事実だが、その点、本作の視点は新しい。
日本の再出発に尽力した米将校が居た。歴史に埋もれた功績と真実は忘れてはならない。
見応えあった内容の中で、日本人女性とのロマンスは取って付けた感アリ。初音映莉子の美しさは否めないが。
それにしても、桃井かおりって日本を舞台にした外国映画によく出るなぁ〜。