「まずは缶コーヒーから。」終戦のエンペラー ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
まずは缶コーヒーから。
日本人ほど曖昧に描かれる人種はいないんじゃないかと思う。
その曖昧さをいい加減だとか、ハッキリしないと判断するのは
国民性の違いで白黒つけたがる米国人には理解できないところ。
天皇制が理解できないのは普通に考えて当たり前のことなのに、
なぜ常に自国目線で物事を判断しないと気が済まないんだろう。
私達日本人だって、やたら内紛を繰り広げている某国における
信教の聖なる領域なんてまったく理解できない。そんな立場で
他国のことに干渉して審判を下す権利なんてどこにあるのか。
「やれ戦争だ」と介入し正義(どっちが?)の味方面する戦勝国が
本当に素晴らしいとは正直思えない。
関係ない話かもしれないが、
洋画を字幕で観ようなんていう意識を持つのは日本人くらいで、
何でもかんでも母国語に吹替えて
流暢な言語を操る世界民族が当然だと思っていたら分からない。
日本人が戦後に大きな復興を遂げたのは、
強い精神力で常に前進するように鍛えられた民族だからである。
間違った歴史や転嫁責任など、未だに取り上げられることの多い
様々な問題をわざわざ表面化して、今さら断罪などしていない。
肝心なのは、二度とその過ちを繰り返さないこと。
誤解に屈する原因を自ら作らないこと。国民を犠牲にしないこと。
二度に渡る投下被害が齎したのは戦争の終結だけではないのだ。
今作は奈良橋陽子さん(関屋宮内次官の孫)率いる日本人部隊^^;が、
大いに活躍を見せた作品だったと思う。
あまり出来がいいとは思わないが(失礼)親日派の准将にスポットを
当てて、より理解できるよう(できてないけど)描かれたのが新鮮。
実際にはなかったロマンスや、フィクションも多い今作だが、
要所要所を重厚な役回りで名役者が演じていたので観応えはある。
あまりに歴史認識を深く掘り下げると、ドラマ性が失われるので
このバランスで良かったのね…と思いつつも前半は長くて疲れた。
最大の見せ場はもちろん会談でのクライマックス。
責任云々を宣い、自己の躍進に余念がないマッカーサーを驚かせた
天皇陛下の人となり(当時は神だったか)
演じた二人はかなり忠実に再現していたようだ。
それにしても宇宙人である(違うか)ジョーンズ氏、この日観たのは
妻に迫られる夫とマッカーサーの二役だった^^;役者って大変ねぇ。
彼が元帥に似ているとは全く思えなかったが、
(インタビューでその部分を真摯に応える彼にますます好感触)
彼ほど日本人を理解できている宇宙人はいないので、ハマり役。
主人公の准将を演じたM・フォックスも凛々しく繊細で良かった。
キャスティングは奈良橋節炸裂で、とってもナイスな選出だった。
(こういう作品を観て日本人を考える。夏休みの宿題には重いかしら)