劇場公開日 2014年1月18日

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黒執事 : インタビュー

2014年1月15日更新
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水嶋ヒロ&剛力彩芽、「黒執事」で見出した新たな目標

命を引き換えに、絶対的契約を結んだ少女と執事になった悪魔。大谷健太郎、さとうけいいちというふたりの監督の手によって、枢やな氏の人気コミック「黒執事」が映画化された。水嶋ヒロ剛力彩芽の怪しげな魅力がスクリーン上で交錯し、新たな「黒執事」の世界が広がっている。悪魔、男装の少女とこれまでにない役どころを演じ、新境地に挑んだふたりに話を聞いた。(取材・文/編集部、写真/江藤海彦)

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BECK」以来約3年ぶりに俳優復帰を果たした水嶋は、これまでとは異なる熱を持ってスクリーンに存在している。水嶋演じる悪魔の執事セバスチャンは、容姿端麗、頭脳明晰とすべてにおいて、人並みはずれた完ぺきさを誇る。水嶋は、完成されたキャラクターに一度はオファーを断ったというが、役者という立場に加え脚本、編集、衣装デザインなど深く製作に参加しないかという提案を受けたことで心が動いた。「スタッフとしての仕事を積み重ねていくと、おのずと自分が理想とする映画の現場や作品の内容が練り上げられていくんです。そこが一番のポイントだったと思いますね。スタッフ側から入れたというのは大きかったですね」

製作側から映画づくりと向き合うことで、「作品の全体図を見ることができるので、作品の中での自分の役割というものがはっきりしてくる」と新しい発見があった。「セバスチャンを演じる上で、目指すべきポイントを狙うことができたんです。今までだったら、自分の発想を自由にふくらませて、つくり手側が望んでいたところとは別の場所に、演技を持っていってしまったかもしれない。でも、今回は本当に的が小さくて、ここに行けば自分たちが思い描く理想的な作品にいけるということがわかっていたので、大きな違いがありました」と狙いを定めた濃い演技に取り組んだ。

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本作は、原作のキャラクターを下敷きにした幻蜂清玄(汐璃)が、過酷な運命ゆえ男性として生きる道を選んだセバスチャンの主人として、物語を動かしていく。剛力演じる清玄は、セバスチャンの先回りした行動に悪態をつくなど怒りをあらわにすることはできるが、壮絶な過去の体験の影響で喜びや悲しみを「なくしてしまった」(剛力)。この怒りという感情も、セバスチャンの存在によって引き出されている。「どんな関係であっても側にいてくれるからこそ、それをこれからつくってくれるのはセバスチャンなのかなって。いつか魂を食べられちゃう関係でも、実は清玄にとってすごく大事な存在なんだろうなと感じましたし、セバスチャンがいるからこそ怒る感情を出すことができると思うんです」

剛力はドラマ、映画、テレビCMなどで見せてきたトレードマークの笑顔を封印し、初の男装で新境地を開拓した。これまでの溌剌としたイメージから一変した、感情を抑えた演技に「ドラマでも映画でも感情を全面に出す役が多かったので、感情を表に出さないお芝居が難しかった」と明かす。それでも、男性としての運命を歩むことになった清玄の過去を踏まえ、「人間の素直な感情を、感じたままに表現できたらいいなと思っていました。でも、清玄には弱い部分を隠して生きているところもあるから、どこまで強く見せればいいのか、人に裏切られたときにどういう感情が出るのか。素のままの感情をどこまで出せばいいのかということを、監督とも話をして、お芝居しながら手探りでつくっていきました」と役に向き合った。

水嶋は、“悪魔の執事”という未知のキャラクターに挑戦するに際し、「参考になる悪魔なんてないから、悪魔を表現するためのルールを自分でつくらなければいけなかった」。人間の姿をしていても、人間としての価値観や常識が欠如している点をポイントに、「人間がうれしいとか楽しいと思うことを、悲しい、つまらないと思うかもしれない。そんなところがいい具合に、面白い要素としてエンターテインメントに映るといいな、楽しめるものになったらと大事にして演じました」と形にした。剛力も「右目にずっと眼帯をしているので、左目だけで相手にどう訴えればいいのか」「男として生きていくという覚悟のなかで、どこで『この子は女性だったんだ』と思わせればいいのか」といった仕草から、「感情を大切にして」演じきった。

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今回、人気原作のオリジナル要素による再構築もポイントとなっている。清玄をはじめとしたキャラクターなど、なぜオリジナルの設定を組み込んだのだろうか。水嶋は「確かに原作があるものを変えるということは、勇気のいることだと思うんですけれど、僕が一番怖かったのは漫画に寄せすぎてコスプレ状態になることだったんです」と明かす。「今の時代の潮流を考えて、ファンタジーを描きすぎるのはあんまりよくないんじゃないかと思いました。幻蜂清玄の物語であることを軸に、厳しい現実を描いていこうと。リアリティを追求するには、オリジナルを考えないと成立しなかったんですね。漫画をそのままやるとなると、求めるCGなどのクオリティと予算が合わなくなる。単純に製作費が足りないんです。いろいろな事情を加味して、ちゃんとしたものをつくるためにはオリジナルの部分をたくさんつくっていかなければならなかったんです」とプロデューサーとしての顔をのぞかせた。

座長として、セバスチャンとして、作品を支えた水嶋。現実からは逸脱したキャラクターながら、リアルに感じられるまで物語を生きた剛力。巨大なハードルに全力で挑んだふたりは今、何を目指すのだろうか。

「お芝居は気持ちがすごく大事なんだということを、改めて感じました。セバスチャンの動きは、完ぺきな執事であり、悪魔のような人間ではないんです。水嶋さんの細部までのこだわりが感じられて、些細な瞬間でも表現するって大事なんだなって思いましたし、一緒にお芝居をしていて『この人悪魔なんだ、人間じゃないんだ』と感じる不思議な部分が、実際に映像で見てすごく素敵な要素になっていて。私ももっともっと深くまで、お芝居と向き合えたらいいなと思っています」(剛力)

「僕はバックヤードの仕事をさせてもらって、みんなで練り上げた土台の上で、役者さんたちが輝いている姿を見るのが一番楽しかった。それぞれの思いがあって表現をされていて。それが見える度にワクワクしましたね。改めて自分は前に出るよりも、輝いている人を見るほうが好きなんだなあと実感したので、今後も人が輝けるようなものをつくっていくことができたらいいなと思っています」(水嶋)

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