「カメラマンに問題ありですが…」ビューティフル・ダイ かもしださんの映画レビュー(感想・評価)
カメラマンに問題ありですが…
日本ではあまり馴染みのないホーム・インベーション・ホラー(家宅侵入ホラー)というジャンルに分類される「サプライズ」なる怪作を手掛けたアダム・ウィンガード監督による長編デビュー作なんですが、去年末に静かに公開され、静かに消えて行ったスリラー映画です。
過去と現在の時系列を組み換えてストーリーを展開させる等、明らかに長編初作と分かる実験的要素に満ち溢れた代物なんですが、素人臭い撮影をしたカメラマンがかなり足を引っ張ってしまった映画でして、米国のみならず、日本でも酷評されてしまった作品でもあります。
確かに、撮影された映像は、矢鱈とアップが多い上、画面をいちいち揺らす為、観ていて非常に疲れる箇所が多く存在します。
こうした点は、非難されても仕方ない感じを受けました。
そもそも、何故、こんな映像を撮る為にカメラマンを2人も起てたのか…(泣)
甚だ疑問にも感じたりもしましたが、人と人の純然たる愛情を根底に敷き詰めた物語は非常に好感が持てました。
特にラストの展開は好感触です。
後々、「ABC・オブ・デス」や「V/H/S」といった短編の仕事が舞い込んで来たのも頷けるラストの締め括り方でした。
因みに、監督は、時系列だけでなく、男女の視点を行き来する様に物語を紡ぐ事で、人間関係における信頼と裏切りを浮き彫りにしようと試みたそうです。
成功しているかは別として、観客に考える幅を残した作風が非常に良く、こうした幅の在り方を作り上げる編集の手腕は中々のものでした。
やはり、編集は監督が手掛けるのが一番ですね。
好みの割れる作品ではありますが、ウィンガード監督の技量と意気込みが伝わる良品ですので一見の価値ありです。
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