「【両親の愛を受けられなかった高校生が、中産階級の級友の週末を宿題の作文として記す。その文章の才能に惹かれた国語教師が彼に指示した事。フランソワ・オゾン監督の才気が見事なる作品である。】」危険なプロット NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【両親の愛を受けられなかった高校生が、中産階級の級友の週末を宿題の作文として記す。その文章の才能に惹かれた国語教師が彼に指示した事。フランソワ・オゾン監督の才気が見事なる作品である。】
ー フランソワ・オゾン監督が、人間が持つ毒と日常に潜む狂気を描いたサスペンスである。-
■作家を目指していた国語教師・ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)は、生徒のひとり、クロードの書いた”週末の過ごし方”を描いた作文に心をつかまれる。
彼はクロードに人間観察の才を感じ取り、小説の書き方を個人指導していく。
クロードは中産階級の級友ラファエルの週末の過ごし方に興味を持ち、ラファエルの家に入り込んでいく。
そして、ラファエル家の生活を覗き見るような作文の内容はエスカレートし、ジェルマンを虜にしていく。
ー フランソワ・オゾン監督作品を初めて劇場で鑑賞したのは、「2重螺旋の恋人」である。"誰だ、この監督は!"と驚き、「グレース・オブ・ゴッド告発の時」”The Cure”の中期の名曲”In Between Days"が爆音で冒頭から流れる「Summer of 85」「すべてうまくいきますように」を鑑賞して来たが、この監督は未だ56歳なのである。
その幅広い作風を含め、物凄い才能溢れる監督である。ー
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作でも、その作品レベルは高い。
作家を目指していた国語教師・ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)が週末の過ごし方を作文に書いてくるようにという宿題に対し、生徒のひとり、クロードは級友のラファエル一家の姿を、生生しく描いてくる。
ー ”中流家族の女の匂い”とラファエルの母、エステル(エマニュエル・セニエ:フランソワ・オゾン監督作品の常連であり、夫はロマンスキー監督である。)について、言及する文章。-
・ラファエルには、中国を顧客とする父(ドゥニ・メノー:「ジュリアン」では恐ろしかったなあ・・。)もいるのである。
・ジェルマンの妻、ジャンヌ(クリスティン・スコット・トーマス)はエスカレートする夫の行動を危惧するが、ジェルマンのクロードに対する指示はエスカレートしていく。
ー 結果として、ジェルマンはラファエル一家にドンドンと入り込んでいき、エステルとは一線を越えそうになる。
この辺りは、虚実を交えて描かれている。-
■クロードの両親の姿は後半になるまでは、一切描かれない。
そして、後半のシーンを観ると、ジェルマンのクロードに対する指示が行き過ぎていた事が分かるのである。
<今作は、自身が成し得なかった文学の成功の素養を持った生徒を持った国語教師の暴走と、その生徒が抱えていた哀しみを描いた作品である。
改めて、フランソワ・オゾン監督が持つ資質の高さと、作風の幅広さに驚かされる作品である。>