「強靭な笑顔。」おしん ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
強靭な笑顔。
なんで今、おしんなんだろう?とはさすがに思った。
朝ドラで爆発的人気を博した橋田壽賀子原作の物語は、
未だに諸外国での評価が高いが、確かにそれはよく分かる。
おしんはその当時は見ていないが、その後完全制覇している。
なので今回の映画版も、肝心な場面は入れてきているな~と、
完成度の高さが随所に出ていた。これは原作と、脚本ありきの
高評価に繋がると思う。もちろん感想は人それぞれだろうけど…
各々のキャストが秀逸で、主役の濱田ここねがとても愛らしい。
あんなにヘラヘラしている子で大丈夫なのか?(ゴメンね)と
心配したが、あの笑顔が見事な執着(いい意味で)に反映される。
「生きる」ということが、脈々と彼女によって紡がれていくのだ。
オリジナルの小林綾子とはまた違う、逸材を見つけたと思った。
彼女が辿る「口減らし」のための奉公は、ずさんな扱いに始まり、
濡れ衣から逃亡へ、山で助けられ、その後、自ら奉公へと出て、
素晴らしい出逢いを果たす。それまでの出逢いも良かったが、
何といっても泉ピン子の大奥様の存在だ。彼女が説く一つ一つ
の言葉に納得し、支えられて、おしんはさらに成長する。そして
おしんの存在が「加賀屋」の跡取り娘を成長させることに繋がり、
それぞれが立場を越えて、人間的に成長していくところが見所。
上戸彩が母親なんて(なんせオリジナルはピン子だもんね)
絶対ムリだろうと思って臨んだのに、却って泣かされてしまった。
いつだって母親は我が子を思っている表情が素晴らしい。
何だかこう言ってしまうと、一体父親は何やってんだ?と、
髪を短く刈り込んだ割に存在感が乏しい稲垣吾郎が可哀想だが。
なんで今、おしん?という疑問は、観終えてよく分かった。
明治の暮らしを体現しろといってもムリな時代、子供が様々な
経験を通して、しっかりと生きることを学ぶ格好の教材なのだ。
虐められても疎まれても前を向いて生きるおしんに、女は常に
誰かのために生きているんだ、のピン子の台詞が重なってくる。
もっと強くなれ。もっと逞しく生きろ。まったくもってその通りだ。
(文句は人一倍だけど我慢は百分の一。黙って一年働いてみたら)