「決して損なわれないもの」魔女と呼ばれた少女 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
決して損なわれないもの
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まず家族を殺すことを強要するという少年少女たちを従わせる反政府軍の手口は残酷であると同時に巧妙だ。
少年たちはその時点で絶望し、かなりのことを諦め、命令に従うだけになってしまう。
あとに残されるのは、生存本能のみ。
樹液に含まれる幻覚作用でコモナに亡霊が見えるようになったのも、生存本能が強化されたものではなかったか?
多くの少年たちが命令に従うだけだった中で、ひとり未来を見据えていたのは呪術師でもあるマジシャンだ。
彼はこのままでは遅かれ早かれ殺される(政府軍あるいは仲間内で)とコモナと共に逃げることを選択する。
つかの間の自由と初恋の高揚の中にいる二人の姿はほかの国のティーンエイジャーの姿と何ら変わりはない。
しかし、その幸せは長くは続かず、コモナはまた大切なものを奪われてしまう。
家族を奪われ、尊厳を奪われ、自由を奪われ、愛する人まで奪われた。
彼女に唯一与えられたのは、望まない妊娠による新たな命のみ。
彼女はその新たな命を愛し、共に生きていくために、亡霊として彼女を守ってくれた両親を埋葬するる。
コンゴ内戦の経緯やこの国の呪術信仰に関してもっと詳しく知っていればと思うが、それをこの映画の中でやってしまうと作品のテイストが違ってしまうような気がする。
世界には今現在もこういう内戦があって、厳しい状況に置かれている子どもたちがたくさんいることを、まず知るべきなのだ。
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