「希望はない、という希望がある映画」魔女と呼ばれた少女 passa76さんの映画レビュー(感想・評価)
希望はない、という希望がある映画
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アフリカ、コンゴ民主共和国の話。冒頭いきなり、衝撃的な展開。反政府団体が小さな部落を襲い、父母殺しをその子どもにやらせるのだ。わけも解らず、反政府団体に入ったコモナは、樹木からとれる白い汁を呑むと、白色に塗られた父母の亡霊を見るようになる。亡霊の父母に助けられ政府軍との戦いに生き残ったコモナは魔女と呼ばれ、反政府群のリーダーの付き人になる。コモナの部落を襲った一人のマジシャンは、密かにコモナに心を寄せる。ある日、マジシャンはリーダーの魔女になったコモナを、「いつか(政府軍との戦いに負けたとき)、リーダーに殺される」と心配し、コモナと一緒に反政府群から逃げ、二人の逃避行が始まる…。
ほとんど、希望がない話だ。小学校6年、中学1年くらいの女のコが、父母の殺害を強要され、人(政府群)を殺害し、反政府群の男の慰み者となる…。希望はないが、この現実を映画という媒体を使って、世界に拡めることが希望になるのかもしれない。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」もそうだが、人を人とも、思わない人間は、この日本にもある一定数いる。それは、おそらく予想以上にいる。まっとうな生活を送っている者の中にもいる。日本人はなんとか、か細い倫理観と、経済・社会に守られているだけだ。倫理観などいつの間にか変わる。人はなぜ人を殺してはいけない?何故自死してはいけない?人はそんなに尊いか?「人の命は地球よりも重い」か?幼い頃、そんなCMが流行って、子どもながらに虫唾が走ったぞ。
そんな儚き倫理観で安穏の生きている自分はこの映画を観ると、背筋を伸ばしながら観てしまった。
「希望はない」、という希望がある映画。
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