「今なお続く危機」エージェント:ライアン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
今なお続く危機
故トム・クランシーが生んだCIAエージェント、ジャック・ライアンの活躍を描いたポリティカル・アクション。
幾度かリセットされているものの、通算5作目、4代目ライアンとなる。
これまでと違ってクランシーの既存の作品の映画化ではなく、ライアンがエージェントとなるまでを描いたオリジナルストーリー。
アフガニスタンで負傷後、CIAのハーパーにスカウトされ、情報分析官となったライアン。モスクワの投資会社の不穏な動きを察知、ロシアの実業家チェレヴィンが目論む世界的経済テロを阻止する。
“ジャック・ライアン”シリーズは「レッド・オクトーバーを追え!」「今そこにある危機」が特に好きだが、本作もなかなか!
中盤のライアンがチェレヴィンのオフィスに潜入して証拠を掴むシーンはハラハラ、クライマックスのバイク&カー・アクションはスリリング。恋人キャシーとのロマンスも織り交ぜ、一級のエンターテイメントとして充分楽しめた。
冒頭、9・11から始まる。
これで今回の敵が薄々察する事が出来る。
テロこそ現代のアメリカの最大の大敵。
世界をターゲットにした経済テロも現代的。
それに立ち向かうライアンは、アメリカの正義の象徴だ。
いつもならアメリカ=絶対正義の作風は敬遠しがちだが、非現実的ではないリアル・ヒーローの苦悩としてのライアンのキャラクター性と、あくまで娯楽社会派アクションに徹した点に好感持てた。
4代目ライアンに扮するは、クリス・パイン。インテリの雰囲気はあまり感じないが(失礼!)、戸惑いながら任務を遂行する正義感と熱血漢はクリス・パインの十八番。
上司ハーパーに、ケヴィン・コスナー。最近脇に回っていい味を出すコスナー、本作でも好助演!
悪役チェレヴィン兼監督は、ケネス・ブラナー。イギリス人の彼がロシア人役なのはご愛嬌だが、悪役としての存在感と憎々しさだけではなく、哀しさも滲ませる。監督としても職人手腕を発揮。
恋人キャシーのキーラ・ナイトレイは相変わらずお美しいが、ちょっとお飾り…?
冷戦時代から現代的テロ事件まで。
国際問題や世界情勢が深刻に続く限り、ライアンは奔走する!