「雨の恋詩」言の葉の庭 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
雨の恋詩
「ほしのこえ」「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」「星を追う子ども」…。
美しく繊細な作品で人気の新海誠監督の新作アニメーション。
万葉集の一編を題材にした“恋詩”。
既に本作を鑑賞した方々のレビューには同じ感想が述べられている。
実は僕も全くの同意見なのだが、やっぱりどうしても言いたい。
映像が美しい!!
この映像の美しさはアニメーションでもトップクラス。
幻想世界を描いて美しいのではない。現代の東京、街の中の庭園、雨の日…下手すれば美しさとは無縁の現実の世界を描いて美しいのだから素晴らしい。
何度も美しい美しいと述べて恐縮だが、本当に美しいのだから仕方ない。この映像の美しさだけでも一見の価値アリ。
物語は…
靴職人を目指す高校生タカオと、謎めいた年上の女性ユキノ。雨の日の庭園で出会い、交流を重ねる内にタカオはユキノに惹かれ、彼女の為の靴を作ろうとする…。
“きれいなおねえさん”はBOYSの憧れ。謎めいた雰囲気は男心をくすぐる。
15歳と27歳。この一回り以上の年の差が、二人のプラトニックな関係を絶妙に描いている。
続いていた雨の日が終わった。何の接点も無いと思われていた二人に、思わぬ接点が。
プラトニックだった二人の関係に、ある種のドキドキさが増す。
接点をユキノは最初から知っていたようだ。それに憤りを感じつつも、タカオは想いをぶつける。
生き方が不器用な大人に、青年は真っ直ぐに…。
ラストは見た人によって、切ないともグッドエンディングとも感じ取れる。
今回の作風は、監督の作品の中で最も人気の「秒速5センチメートル」に近い。
46分という尺の短さは賛否分かれる所だが、「ほしのこえ」は10数分の短編、「秒速5センチメートル」は1時間弱の中編。言わば、ホームグラウンド。
新海作品の魅力がギュッと濃縮され、満足出来る。