「予定調和でも胸打つ佳作」アンコール!! arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
予定調和でも胸打つ佳作
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病気の妻マリオンを看病し、妻の合唱団の練習の送り迎えも献身的にこなすアーサー。
理想的な老夫婦に見える二人だが、明るく社交的なマリオンに対し、アーサーは合唱団にも辛辣な言葉を吐く偏屈爺さん。
マリオンはアーサーを社会と繋ぐ橋。それは、アーサーと息子ジェームズとの関係でも同じで、間に母親のマリオンがいることで親子はとりあえずは平和な関係を保っているに過ぎない。
マリオンの病気再発後、アーサーと世間との関係、息子との関係の雲行きが怪しくなることは必至なのだ。
案の定、マリオン亡き後、アーサーは息子とも世間とも距離を置き閉じこもってしまう。
マリオンや合唱団のメンバーにとって歌を歌うことは喜びであり生きがいだろう。
でも、アーサーにとってはもっと大きな意味がある。
いつも言葉が足りなかったり、厳しい物言いになってしまうアーサーにとっては、歌うことは素直な自分の気持ちを伝える方法であり、自分を解放する方法なのだ。
やはりアーサーをテレンス・スタンプが演じていることが大きい。
人前で歌ったり踊ったりするなど想像もつかない彼が演じることで、アーサーにとって人前で歌うことが如何にハードルの高いことなのか、絶対的説得力が生まれる。
予定調和でも、ラストの彼の歌が胸を打つ。
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