「『ゴジラ』を『神』へと昇華させた映画」GODZILLA ゴジラ 羚羊亭 佗助さんの映画レビュー(感想・評価)
『ゴジラ』を『神』へと昇華させた映画
…。
私は、逡巡しています。
果たして、今、観終わったこの映画について、上手く説明出来るだろうか?
と…。
映画が終わり、エンドロールが流れ、劇場の照明がつき、他の観客たちが席を立って帰り始めても、尚、私はしばらく放心状態でした。
一体、この映画は何だ?
オープニング、実に控えめに表示されたメイン・タイトルの時点で、気が付くべきだったのかも知れません。
この映画が、怪獣映画ではなく、SF映画…いや、映画史に残る大傑作であるコトに…。
「大傑作」…。
何とこの映画を語るには、あまりに陳腐な表現…。
この映画には、例えば、「パシフィック・リム」のような「娯楽性」は、皆無です。
脚本も演出も、その逆を行きます。
「GODZILLA」を名乗っておきながら、映画全編でのGODZILLAの登場場面は、かなり少な目です。
それは「初代ゴジラ」以上に少ない…と云ったら、ご理解頂けるでしょうか?
しかし、そのコトは、この映画の欠点にはなっていません…。
それどころか、まさにそのコトこそが、この監督の演出意図であり、全く新しい「GODZILLA」の可能性の提示だからです。
日本人は、その新たな可能性に打ちのめされるべきです。
そして、ハリウッドが生み出した「GODZILLA」に戦慄しなければなりません。
何処までも、冷静な視点。
何処までも、計算されつくした完璧な物語。
この映画は、日本人が脱却出来なかった「怪獣映画」、いや「ゴジラ」の呪縛すら飛び越え、新たな地平の向こう側へと誘ってくれます。
私は、字幕版を観ていませんが、恐らくは吹替版で観た方が、よりこの映画の本質に迫るコトが出来るでしょう。
恐ろしい映画を観てしまいました…。
そして、この若き一人の映画監督エドワード・ギャレスの才能に、完膚なきまで叩きのめされました。
「GODZILLA」と云うスペルには、ご承知のように「GOD(神)」と云う意味が込められています…。
まさしく、この映画は「ゴジラ」を「神」へと昇華させた史上初の映画なのです。