「姿無きエゴイズムの形。」かぐや姫の物語 yuki-yo@ybfbwさんの映画レビュー(感想・評価)
姿無きエゴイズムの形。
宮崎駿の『風立ちぬ』に続き、今年のジブリ作品は手強くて、じつに楽しい。
どちらも傑作であり、
また巨匠と呼ばれる人物が、エゴを全開にして作品を作っている点で共通しているのが、興味深い。
『風立ちぬ』は、
宮崎駿個人の理想、思想、意志で描き抜いた、エゴイズムな作品である。
その表現のために堀越二郎、堀辰雄とゆー二人の人物と、
日本戦史から航空機の歴史までも媒介とした、バケモノのよーな映画だった。
『かぐや姫の物語』は、
原作である「竹取物語」に忠実であり、逸脱したものではない。
現代的な解釈があるわけでも、斬新なアレンジがあるわけでもない。
ならば何故、
今、このよーな作品を完成させたのか。
まず、『かぐや姫の物語』には、高畑勲監督個人の投影は、一切ない。
ジブリアニメ的な特徴すら乏しく、物語は昔話である。
しかし、圧倒的な絵の力、動画はジブリだからこそ描けたもので、
昔話を語る、魅せる力は、高畑勲の非凡な演出によるものだ。
完成までに8年もの時間と、莫大な制作費が費やされた。
監督やスタッフにも高齢な方が多く、安易に次作を望む状況ですらない。
そうして生まれた作品とは、何か。
遺産である。
誰かが、
誰にでもわかる、最高水準のアニメーションを、
日本だけではなく、世界にも向けて作らなければならない。遺さねばならない。
そんな姿なきエゴを命題として、この作品は生まれたのだと、感じられた。
灯火のような、
時代の風化にも耐えうるアニメーションを作る、と。
そしていつか、
この作品に触れることで、新たな高畑勲や宮崎駿が生まれることを、望むかのように。
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