「カメラを背負って。」春を背負って ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
カメラを背負って。
日本映画を牽引してきた名カメラマンの監督第二作目。
前作同様、冒頭から広がる美しいパノラマ世界。
まるで木村大作写真展を観にきたかのような絵ではあるが、
今時CGに頼らない映像表現の素晴らしさには感動する。
木村大作はやはりカメラマンなんだと思う。監督としての力は
監督勢に及ばない。俳優の力で演技をさせて、それを見守る
ような演出に終始している。一作目同様、それは確かにある。
ただ、昔ながらの映画を観てきたクチにとっては、
映画ってこういうものだったよね。が満載で、ベタでラストが
まる分かりの話を最後の最後まできちんと作り込んでいるのが
例えばエンドロールの映像と歌のマッチングだけでよく分かる。
監督が絶対にこれ!と選びに選んだ山崎まさよしの「心の手紙」
大変失礼ながら(いつもすいません)
最後の最後であぁ~これは素晴らしい♪と思ってしまった。
最近観た一押しの時代劇で、唯一の難点がラストの選曲だった。
雰囲気をブチ壊す楽曲をわざわざ選ぶ大人の事情に呆れる。
観客が心地良く劇場を出られる作品が、以前は多かった。
謎が謎を呼びリピーター鑑賞で確認しないと把握できないとか、
このラストはご想像にお任せするとか、主人公はどうなったか
分かりませんとか、気持ち悪い終わり方をするのはホラーぐらい。
昭和後期の日本映画には最後だけ巧く纏まった作品も多かった。
テーマソングが売れ、出演したアイドルが売れ、一応監督名も
そこそこ売れ(爆)、みたいな感じの凡庸作品がかなりを占めた。
今や「名」がついている監督だって、あの頃はボロクソに言われて
いたのに、まさかそれが今頃名匠なんて呼ばれているのが面白い。
木村大作は数々の現場を体験してきて、映画がどう作られるべき
かを学び、今持ってそれを大切にしているのが分かる。
だから今作は今作で観ておいて決して損はしない作品だと思う。
本当の雪はあんなで、本当の空はあんなで、花はああいう色で、
そこで合宿(大変だったようですが)を経験して、演技に臨んだ
俳優たちが、素晴らしい演技を魅せてくれた。そういう作品である。
(しかし山に縁がない私はやっぱり怖い。高い所はどうにもダメだぁ)