タイガー 伝説のスパイのレビュー・感想・評価
全4件を表示
印パより愛をこめて。 ボリウッドらしい娯楽作だが期待値は上回らず…。
インドの諜報機関”RAW”のエージェントたちの活躍を描くスパイアクション・フランチャイズ「YRFスパイ・ユニバース」の第1作目にして、RAWの凄腕スパイ・タイガーの戦いを描く『タイガー』シリーズの第1作。
とある任務のためダブリンへと送られたRAWの諜報員タイガーは、そこで女学生ゾヤと運命的な出逢いを果たす。次第に惹かれ合う2人だったが、パキスタンの諜報機関”ISI”のエージェントがタイガーを襲う…。
イギリスにはジェームズ・ボンドが、アメリカにはイーサン・ハントが、そしてインドにはこの男がいる!
彼の名はタイガーッッ!!任務の度毎に死体の山を築く、ちょっぴり恋に奥手なナイスガイなマッチョマンである🐯
マーベル映画の成功を受け、多くの映画会社が独自のシェアード・ユニバースを作り上げようと躍起になっていた時代が一昔前にあった訳だが、映画の都ボリウッドにもそのムーブメントは届いていたようだ。
インド最大の映画会社の一つ「ヤシュ・ラージ・フィルムズ(YRF)」は、実在する諜報機関RAWのエージェントを主役にした映画を複数制作し、その主人公たちをクロスオーバーさせるという企画を計画。その第1弾が本作『タイガー 伝説のスパイ』(2012)なのです。
とはいえ、壮大なプロジェクトである「YRFスパイ・ユニバース」、実はこの第1作を公開した時点ではそんな構想は存在していなかったらしい。『タイガー』シリーズを2本作り終えた段階で、「これすげーヒットしてるし、もしかしてユニバース化出来るんじゃね?」とお偉いさんが判断。直接の繋がりはないものの同じ世界観を共有しているシリーズ第3作『WAR ウォー‼︎』(2019)を経て、第4作目『PATHAAN/パターン』(2023)で本格的にユニバースが始動し始めた、とこういう流れのようです。まぁまだこの1作目しか観ていないから詳しい事はわからないだけど。おいおいちゃんと追いかけていきたいと思います。
監督はカビール・カーン、主演はサルマン・カーン。この2人は同じ座組で『バジュランギおじさんと、小さな迷子』(2015)という映画を後に制作する事になる。まぁこれが死ぬほど泣けるめちゃくちゃ良い映画で、インド人だけでなく日本人もびっくりすることになったのは記憶に新しい。
本作と『バジュおじ』に共通しているのは、インドとパキスタン、政治的難局にあるこの2国間の友好への願い。カビール監督とサルマン・カーンは、国家に引き裂かれる2人が困難に直面しながらもそれを乗り越え、最後には固い絆を結ぶという物語を共に作り続けているのだ。
こういった政治的メッセージをエンタメ映画という形で世に送り出し、そしてそれを大ヒットさせられるクリエイターというのは本当に貴重だしとても立派。彼らの映画を観て感動した子供達が、将来印パの関係改善に向けて尽力するかも知れない。そういう可能性の種を蒔くという行為こそがフィクションの存在意義であると思うし、それを実行する彼らに最大級の敬意を表したい🫡
内容としては、ザ・ボリウッドといった具合にエンタメ要素がてんこ盛り。アクション、ラブコメ、カーチェイスに歌にダンスに…。2時間12分というインド映画としてはかなり短いランタイムの中に、お楽しみ要素がこれでもかと詰め込まれている。いやぁもうお腹いっぱいです。
前半は完全にラブコメディ。一流スパイなのに恋に奥手という、ボンドやイーサンの真逆を行くかのような中年男と、この世のものとは思えない絶世の美女との可愛らしい恋模様が描かれる。インド映画お決まりのダンスシーンに「お前さっき踊ってけどあれ何!?」というメタ的なツッコミが入ったりもするし、全くスパイ映画らしさのない明るい物語となっています。
しかし後半、ゾヤの正体が判明するあたりから映画のカラーが180°転換。『ボーン』シリーズ(2002〜)もかくやというハードボイルドな逃避行が繰り広げられる。
ラブコメとハードボイルド、一粒で二度美味しいという見方も出来るのだが、前半と後半のタイガーが同一人物だとはどうしたって思えない。ギャップ萌えとかそういう範疇を超えてんよー。マジになったタイガーはヤバいゼ…、という事なんだろうけど、それならお前最初からマジになっとけよ!!ダブリンのミッション力抜きすぎだろっ!∑(゚Д゚)
本作のユニークなところではあるし、この点には目を瞑るとしても、肝心のアクションシーンに見せ場がないというのは流石に頂けない。そもそもスパイ映画らしいアクションが冒頭と中盤、そして終盤の3箇所しかないというのは少々肩透かしだし、そのアクション描写もヌルい。スタントマンの使い方が露骨すぎて緊張感がない。しかもカメラのブレかたがかなり酷く、何をやっているのか分かりづらい上にかなり酔う。やはりカメラワークには安定感が欲しいものである。
決して退屈はしなかったのだが、見どころも特になかったというのが本作の総評である。ラージャマウリ監督ばりのアクションを期待していたこちらにも落ち度はあるとは思うが、やはりスパイ映画なのだから目を目張るような特大アクションシーンは用意しておいて欲しかった。サルマン・カーンはジャケットの上からでもわかるほどの隆々とした筋肉の持ち主。着替えシーンでの裸体には度肝を抜かれた。なんじゃこの筋肉!?彼の筋肉をフル活用すれば、すごいアクションを撮れそうなものなのに。いやはやなんとも勿体無い。
そういえば、こういう映画には悪の親玉がつきものだと思うのだが、本作には全く登場しなかった。そのあたりは次作に登場したりするのかしらん?という訳で、次も観まーす👀
サービス精神を素直に賞賛!
インド映画恐るべし!
アクション、諜報合戦、ラブコメ、ミュージカル(少なめ)という、およそ一本の映画の中で同居できるとは思えない要素を巧みに融合させた見事なエンターテイメント作品。
インターバル前はラブコメ要素が強いが、後半は印パの“ロミオとジュリエット”である二人の逃避行がメインになるというギアチェンジも巧み。
勿論アクションシーンも見応え充分!
イラク、アイルランド、イスタンブール、キューバと舞台を移し観客の目を楽しませつつ、その土地の音楽も上手く活かしているのも、ニクい!
加えて、全ての要素の背景にはリアルでシビアなインドーパキスタンの緊張関係関係があり、敵対する両国の諜報機関RAWとISIに所属する男女二人の結びつき、愛が、両国の緊張緩和へのメッセージにもなっているという素晴らしさ!
何より、冒頭のアクションシーンから、エンドロールのミュージカルパートまで観る人全てを楽しませようとする作り手の姿勢を素直に賞賛したい。
インドのアクション映画って冗談抜きで結構面白いんです!
インド映画「きっとうまくいく」が事の他面白かったので、本作「タイガー伝説のスパイ」も観てみたら、こちらの映画も文句無く良い出来だった。
私の今迄のインド映画に対するイメージと言うと、大勢の登場人物がみんなで、一斉に歌って踊ってのミュージカル映画のイメージが強烈で、そして物語と言えば、ロミオとジュリエットを越える様な、大恋愛ムービーに、インドのカースト制を加えて描いた超古典文学の様な、作品のイメージで記憶していただけだ。
しかし、「きっとうまくいく」は本当に今迄のインド映画のイメージを巧くひっくり返す事に、きっとうまくいった最初の作品のようだ。そしてその大ヒット作「きっとうまくいく」の次にヒットした作品が、本作の「タイガー伝説のスパイ」と言う訳で、昨年2012年のインド映画興行成績第1位を記録した作品だそうだ。
この作品は、インド映画としては、珍しくショートムービーの2時間10分程だと言うのにも驚かされた。
私などは、むしろもう少しだけ長くても良いのではと想う程に楽しめた作品だ。
私は通常、邦画を観るか、ハリウッド映画を観るかに偏りがちなので、インドなどの映画もこれからは、積極的に観ていきたい映画の一つだと今回この作品を観て思った。
昨年は、イラン映画の「別離」の様に本当に、派手なCGアクションも無く、膨大な巨費を投じ無くても、あのような立派な作品が出来る事を再認識させられた作品に出会えた。
大の映画ファンの私としては、世界は広いので、まだまだ、世界各国から素晴らしい作品が集められる事を願って止まないが、そんな中でも、インド映画も、今迄のステレオタイプの映画ばかりでない昨今のインド映画なら、今後が多いに期待出来る。
そして、本作の様なアクション映画でも、ジャッキー・チェーンには未だ及ばないかも知れないが、身体を張った見事な迫力溢れる挌闘シーンを見せてくれているのだ。
益々今後のインド映画に期待値アップしてしまいそうだ。
今回の作品でも、敵対するインドとパキスタンの双方の国の謀報局局員同志のタイガーとゾヤが、恋に落ちて、2人で世界を股に、逃亡するわけだ。このお話は、入ってみればロミオとジュリエットの世界感のスケールをもっと大きく広げたようなお話で有るけれども、そうして世界観を拡げる事で、政治的に相容れない隣国同士の謀報局局員の個人的な恋愛映画で無くなり、人間の根源的な問題として描いてみせるのだから、やはりインドは、考え方が大きくて深いよね。歴史に裏付けされた文化や、思想と言うものはこう言う形で巧く表現される事に恐れ入った。そしてキューバを訪れた、2人は、街の壁にチェ・ゲバラの画と共に、「命がけでなければ、それは、愛ではない」と言う彼のメッセージを読むシーンも巧い!説明セリフを2人に吐かせるのではなく、さりげない街の壁に映画のテーマを覗かせている。そしてエンドロールの歌と踊りがまた楽しめる。その歌にも作者の映画のテーマがしっかりと秘められている。こう言うところが実にニクイ!
それにしても、タイガーを演じたサルマーン・カーンは、シルヴェスター・スタローンに似て見えるし、ゾヤを演じたカトリーナ・カイフは、まるでサンドラ・ブロックに見えてしまったのには笑えた。ハリウッドで、サンドラ・ブロックとS・スタローンの共演作が出来たら、それはそれで面白そうだ。スタローンのコメディ映画、あなたは観たいと思わない?
全4件を表示