「誰しも凶悪な一面を持つ」凶悪 たかあきさんの映画レビュー(感想・評価)
誰しも凶悪な一面を持つ
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藤井が最後まで、母親を老人ホームに入れるのをためらっていたのは、
自分の追う事件が、子に見捨てられた老人が殺される事件だったからだ。
しかし、いつの間にか家庭は崩壊に向かっていて、洋子と母親は暴力関係にあると知る。
ここから、一般家庭にも凶悪が生まれうるという訴えが始まる。
最後のシーン、藤井は木村と面会をするが、
『最も自分を殺したがっているのは、お前だ』と、木村に指さされる。
ガラスに映り込んだ自分を見て、藤井は自分の凶悪な一面を発見する。
そして、面会室の向う側から、藤井を見たカットがあるが、
その風景は、今まで藤井側から見ていた風景と一緒で、
犯罪者の世界と、私たちが正常と思っている世界が、交換可能であり、
私たちの世界にも凶悪が潜んでいることを感じさせる。
一方、凶悪犯である須藤純次は、人間らしく描かれている。
慕ってくれた五十嵐を苦しみながら殺す演技、その後やり切れない思いで線香をたく演技は圧巻だ。
先生が思い通り逮捕され、宗教に熱心になると、
今までと対照的に、無機質な人となり、逆に気持ち悪く感じる。
狂気をありのまま表現する人の方が正常ではないか、
そんな疑問が投げつけられた様に感じた。
全体を通して、物語の構成が素晴らしい。最後まで見飽きることのない良作だ。
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