「あなたの肉親がこんな死に方をしたとしたら…」凶悪 まつだ𝕏ですがなにか?さんの映画レビュー(感想・評価)
あなたの肉親がこんな死に方をしたとしたら…
1999年の『上申書殺人事件』を基にした『凶悪-ある死刑囚の告発-』を基にしたクライムサスペンス映画。
山田孝之さんや『地面師たち』出演のピエール瀧さん、リリーフランキーさん、松岡依都美さんが登場する。
須藤(ピエール瀧さん)と木村(リリーフランキーさん:本作では『先生』と呼ばれる)をはじめとするグループは、借金を返せない債務者を殺したり、資産家殺人、保険金殺人など殺人事件を繰り返してきた。
本作は家族がいなかったり家族から厄介者扱いされた高齢者が殺され死体が損壊・遺棄されるまでの事件のプロセスが生々しく、特に木村や須藤が半ば愉しそうに殺していく場面や、家族を見捨てる場面に派手さがない分リアリティがある。
肉親がこんな死に方をしていいのかと思うだろう。
木村と須藤ファミリーの和やかな様子が、事件の狂気をより引き立てるだろう。
また、須藤から手紙を受け取り単独取材を続ける雑誌社の記者・藤井修一(山田孝之さん)の母・和子(吉村実子さん:本作では認知症を患っている)と洋子(池脇千鶴さん)の関係と事件の被害者になってきた高齢者たちの関係を重ね合わせることもできる。
特に洋子と修一の対立は、リアリティのある池脇千鶴さんの演技がより現実に近いものを感じる。
紆余曲折の末、和子は終盤で老人ホームに入所するが、木村のグループは別の老人ホームで標的を探している様子と合わせてみると、和子も運が悪ければ木村のグループに殺されていたのかもしれない。
瀧さんの滑舌が瀧さんファンの間でネタになることがあるが、その場面では可愛がってきた舎弟・五十嵐(小林且弥さん:後に監督として瀧さん主演の『水平線』を制作した)との関係が木村の差し金で引き裂かれ、須藤の子供達を可愛がるほどだった木村と須藤の関係が分裂し上申書で告発することになったことが分かる。
高齢の肉親がいる身であれば、もし肉親が認知症などで介護しなければならない状態になったところに凶悪犯が甘言を弄して接近してきたとして、それを防げるのか、と思うことになるだろう。