「アリが歩む世界。」君と歩く世界 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
アリが歩む世界。
原作を(例によって)まったく読んでおらず、
ポスター、チラシ、予告(ほとんど見なかったなぁ)のセットから
今作のあらすじを理解したつもりで観に行ってエッ?となった。
ほとんどの皆さまが、そう感じたとは思うけど…^^;
あとで調べてみたらこの作品、短編二つを監督が組み合わせ
一本の映画に仕上げちゃったのね。しかも脚色しまくり(爆)
M・コティヤールがシャチの調教師…というのは合ってるけど、
原作じゃ男だし、タイトルになっている短編の方には、彼女は
もちろん出てこない。そちらはまさに「ボクシング話」。というより
この作家さん、全編を通してボクシングの世界を描いてる感じ。
あぁそうでしたか^^;初めから分かっていればなぁー(爆)
マリオンの方がメインだと信じ込んで(さらには海や水族館系の)
美しい光景を想像に描いていると、泥水の中に突き落とされる^^;
暴力、セックス、貧困、障害、さらには子育ても加わり、どちらか
といえば、険しいケモノみちに取り残された感が強くなってくる。
決して分かり辛い話ではないので、訳が分からなくはならないが、
主人公の行動そのものが不信感、不安感、生々しさの総てなので
あーあー、またそっち行っちゃったよ(汗)みたいな、なんというか
総てが裏目に出る男の不安と不幸と欲望塗れの生活を見せられ
ているような気分になってくるのだ。決して心地良い作品ではない。
まぁ男性向きだと、いえるのかなぁ…。
ちなみにマリオンはキレイですよ^^; 両脚を失ってもすっぴんでも。
無理に絡めたと思われる脚本は、まず関係のない話に関係性を
持たせるため、二人を出逢わせ、事故に遭わせ、また出逢わせて、
男と女の関係へと進めていくのだけど、どう考えてもあの彼女が、
道端格闘技に燃える主人公を応援するとは思えず、むしろ心配して
やめさせる方に出るんじゃないかと、私には思えて仕方なかった。
自身が男遊びに興じていたとはいえ、やたらと暴力を振るわれたり、
血まみれになって車に戻ってくる男をお金の為にまた送り出すなんて
(さらに他の女とも自分とも、身体だけ?と思わせる性行為が多くて)
結婚?して子供まで作っておきながら、今さら女の扱いが分からない
なんて(だから妻とも別れたのか?)あり得るんだろうかと首を傾げる。
姉と義兄の恩情に感謝していたのは分かるが、まさかの違法行為で
姉を解雇に追い込み、自身はまるで逃亡?とも思われる突然失踪。
分からん、まったくもって分からんぞ!
どうしてアンタには、女・子供の気持ちが分からんのだ!?
しかし彼には強運がついている。誰も彼を恨んだり責めたりしない。
義兄の親切っぷりには涙が出るほど、あり得なさが満載だし~(爆)
アリ、いいかい?氷上に子供残して立ちションするのはアンタだけ!
ファイターとしては才能あっても、人間としてはまだまだのアリ。
チャンピオンベルトに彩られたラストの幸福が、どうしても私には
「チャンプ」みたいになるんじゃないかと、坊やの顔を見てしまった。
小説の方がもっと粗野だけど、あり得る日常を描いている気がする。
(脚の変化や義足歩行など彼女の回復ぶりはお見事。精神的にもね)