「格闘場面がかっこいい」君と歩く世界 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
格闘場面がかっこいい
貧困や片親、両足切断といった人生の苦味と希望を体温の伝わるようなタッチで描いた映画だった。そんな文芸的な映画だと思っていたら思わず、路上格闘技、しかも賭博つきで描かれていてびっくりした。
どのようなシステムで賭けが行われているのか、もうちょっとじっくり見たかった。格闘場面は引いた目線で描かれる事が多く、この映画の本筋ではないのが残念だった。もっとそっちに寄せて燃える展開で描いたのが見たいと思った。しかしかっこいい場面だった。
主人公のおじさんは優しくて強くてかっこいいナイスガイで子供もいて非常に羨ましい。貧乏でフリーターのような暮らしをしているが、しょっちゅういろんな女とセックスしていて、ムエタイ王者でもあった。身近な存在のように描かれていたが、よくよく考えるととんでもない英雄でうらやむべき存在だった。
氷を割る場面は拳じゃなくて体重を乗せた足で割れよ~!と思った。若いから仕方がないのかもしれないが、息子をもっと可愛がって欲しかった。
しかし、両足を失ったり貧困に陥っても30代なら気力や体力で前向きにもなれるかもしれないが、40代ともなるとすっかりそんな自信がもてない。夜寝てもすぐ目が覚めてしまってすっきりできず、昼間眠くて仕方がないなど、満足に休養を得ることもできなくなったしまった。これから先よりしんどくなっていくと思うとつらくて仕方がない。最低限タフでないと生きるのがつらいということが痛感させられる映画でもあった。
『ソウル・サーファー』でも片腕を失った女の子が海で生命力や人生を取り戻す映画だった。この映画でも足を失って初めて海で泳ぐ場面が非常に感動的だった。自分や家族が体を欠損したら海に行ってみたいと思った。しかし元から海や水泳などに親しんでいる人だからこそかもしれないので、状況を見極めて実行したい。